左冠動脈主幹部病変に対するステント留置術とバイパス術の無作為化試験
Randomized Trial of Stents versus Bypass Surgery for Left Main Coronary Artery Disease
S.-J. Park and Others
非保護左冠動脈主幹部狭窄の治療には経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が用いられる頻度が上昇しているが,治療の第一選択は冠動脈バイパス術(CABG)であると考えられている.
非保護左冠動脈主幹部狭窄患者を,CABG 群(300 例)とシロリムス溶出ステントによる PCI 群(300 例)に無作為に割り付けた.非劣性マージンを広く設定し,1 年の時点での心臓または脳血管の重大な有害事象(全死因死亡,心筋梗塞,脳卒中,虚血による標的血管血行再建)の主要複合エンドポイントについて両群を比較した.2 年の時点でのイベント発生率についても比較した.
主要エンドポイントは,PCI 群で 26 例,CABG 群で 20 例に発生した(累積発生率 8.7% 対 6.7%,リスクの絶対差 2.0 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -1.6~5.6,非劣性について P=0.01).主要エンドポイントの発生数は,2 年の時点までに PCI 群 36 例,CABG 群 24 例となった(累積発生率 12.2% 対 8.1%,PCI のハザード比 1.50,95% CI 0.90~2.52,P=0.12).2 年の時点での死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合発生数は,PCI 群 13 例,CABG 群 14 例であった(累積発生率はそれぞれ 4.4%と 4.7%,ハザード比 0.92,95% CI 0.43~1.96,P=0.83).虚血による標的血管血行再建は,PCI 群 26 例,CABG 群 12 例に施行された(累積発生率 9.0% 対 4.2%,ハザード比 2.18,95% CI 1.10~4.32,P=0.02).
非保護左冠動脈主幹部狭窄患者を対象としたこの無作為化試験では,シロリムス溶出ステントによる PCI は,心臓または脳血管の重大な有害事象に関して CABG に対して非劣性であることが示された.しかし,非劣性マージンは広く,この結果は臨床の方向性を示すものとみなすことはできない.(韓国ソウル心血管研究基金ほかから研究助成を受けた.PRECOMBAT ClinicalTrials.gov 番号:NCT00422968)