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June 30, 2011 Vol. 364 No. 26

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アフリカの重症感染症児における輸液ボーラス投与後の死亡率
Mortality after Fluid Bolus in African Children with Severe Infection

K. Maitland and Others

背景

医療資源の限られた環境で生活する小児がショックと生命にかかわる感染症を起こした際に,輸液蘇生が果たす役割は確立されていない.

方 法

ウガンダ,ケニア,タンザニアにおいて,重症熱性疾患と循環不全を呈する小児を,A 層では,入院の時点で,5%アルブミン溶液 20~40 mL/kg 体重をボーラス投与する群(アルブミンボーラス群),0.9%生理食塩水 20~40 mL/kg 体重をボーラス投与する群(生理食塩水ボーラス群),ボーラス投与を行わない群(対照群)に無作為に割り付けた.B 層では,重症低血圧を呈する小児を,いずれかのボーラス群に無作為に割り付けた.ガイドラインに基づき,全例に適切な抗菌薬治療,静脈内維持輸液,対症療法を行った.栄養失調または胃腸炎の小児は除外した.主要エンドポイントは 48 時間死亡率とした.副次的エンドポイントは,肺水腫,頭蓋内圧亢進,4 週時点での死亡または神経学的後遺症などとした.

結 果

A 層では 3,600 例の登録を計画していたが,3,141 例を登録した時点で,データ・安全性モニタリング委員会より中止が勧告された.マラリアの保有状態(全体で 57%)と臨床的重症度は,全群で同様であった.48 時間死亡率は,アルブミンボーラス群 10.6%(1,050 例中 111 例),生理食塩水ボーラス群 10.5%(1,047 例中 110 例),対照群 7.3%(1,044 例中 76 例)であった(対照群に対する生理食塩水ボーラス群の相対リスク 1.44,95%信頼区間 [CI] 1.09~1.90,P=0.01;生理食塩水ボーラス群に対するアルブミンボーラス群の相対リスク 1.01,95% CI 0.78~1.29,P=0.96;対照群に対する両ボーラス群の相対リスク 1.45,95% CI 1.13~1.86,P=0.003).4 週間の死亡率は,各群でそれぞれ 12.2%,12.0%,8.7%であった(ボーラス群と対照群の比較について P=0.004).神経学的後遺症は 2.2%,1.9%,2.0%(P=0.92),肺水腫または頭蓋内圧亢進は 2.6%,2.2%,1.7%(P=0.17)に発生した.B 層では,アルブミンボーラス群の 69%(13 例中 9 例),生理食塩水ボーラス群の 56%(16 例中 9 例)が死亡した(P=0.45).結果は試験実施施設間,およびショックの重症度とマラリア・昏睡・敗血症・アシドーシス・重症貧血の状態によって分類したサブグループ間で一貫していた.

結 論

医療資源が限られたこれらのアフリカ地域では,輸液ボーラス投与によって,循環不全を呈する重症小児の 48 時間死亡率が有意に上昇した.(英国医学研究評議会から研究助成を受けた.FEAST Current Controlled Trials 番号:ISRCTN69856593)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 2483 - 95. )