October 13, 2011 Vol. 365 No. 15
環状鉄芽球を伴う骨髄異形成における体細胞 SF3B1 変異
Somatic SF3B1 Mutation in Myelodysplasia with Ring Sideroblast
E. Papaemmanuil and Others
骨髄異形成症候群は,多様な病態を呈する,頻度の高い慢性の血液癌・造血器腫瘍の一群である.新たな遺伝子異常を同定することにより,新たな診断・治療戦略がもたらされる可能性がある.
超並列塩基配列決定法を用いて,軽度骨髄異形成患者 9 例のゲノム上で蛋白をコードするエクソン全体にわたり,体細胞性に獲得された点変異を同定した.骨髄疾患または他の腫瘍を有する 2,087 例のコホート集団において,RNA スプライシング因子 3B サブユニット 1 をコードする遺伝子(SF3B1)の標的再配列決定も行った.
9 例において点変異 64 個を同定した.SF3B1 に,体細胞性に獲得された反復変異を同定した.追跡により,骨髄異形成症候群患者 354 例中 72 例(20%)で SF3B1 変異の存在が明らかとなり,この変異は環状鉄芽球を特徴とする疾患を有する患者でとくに頻度が高かった(82 例中 53 例 [65%]).SF3B1 変異は他の腫瘍を有する患者でも認められ,その保有率は腫瘍の種類により 1~5%であった.観察された変異は,偶然に基づき予測されたほど有害ではなく,変異蛋白では,機能に変異がみられるが,構造の完全性は維持されていることが示唆された.SF3B1 変異は,中心的なミトコンドリア経路を含む重要な遺伝子ネットワークのダウンレギュレーションに関連した.臨床的には,SF3B1 変異保有者のほうが非保有者よりも,血球減少症が少なく,無イベント生存期間が長かった.
骨髄異形成症候群の発症機序において,SF3B1 の変異はメッセンジャー RNA スプライシングの異常に関与している.(Wellcome Trust ほかから研究助成を受けた.)