December 1, 2011 Vol. 365 No. 22
心筋梗塞後の予防的薬物療法に対する全額保険給付
Full Coverage for Preventive Medications after Myocardial Infarction
N.K. Choudhry and Others
心筋梗塞後に処方された薬剤の服薬遵守状況は不良である.自己負担をなくすことにより,服薬遵守と転帰が向上する可能性がある.
心筋梗塞後に退院した患者を登録し,患者の保険支払い組織を,スタチン,β遮断薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬のすべての処方について,全額保険給付を行う群(保険支払い組織 1,494 団体,患者 2,845 例)と,通常の保険給付を行う群(保険支払い組織 1,486 団体,患者 3,010 例)に無作為に割り付けた.主要転帰は初回の主要血管イベントまたは血行再建とした.副次的転帰は,服薬遵守率,主要血管イベント・血行再建の総発生率,初回の主要血管イベント発生率,医療費とした.
服薬遵守率は通常保険給付群で 35.9~49.0%であり,全額保険給付群はそれより 4~6 パーセントポイント高かった(すべての比較について P<0.001).主要転帰に 2 群間で有意差は認められなかった(100 人年あたり全額保険給付群 17.6 件 対 通常保険給付群 18.8 件,ハザード比 0.93,95%信頼区間 [CI] 0.82~1.04,P=0.21).主要血管イベント・血行再建の総発生率は,全額保険給付群で有意に低く(21.5 件 対 23.3 件,ハザード比 0.89,95% CI 0.90~0.99,P=0.03),初回の主要血管イベント発生率も同様であった(11.0 件 対 12.8 件,ハザード比 0.86,95% CI 0.74~0.99,P=0.03).自己負担をなくしても総支出は増加しなかった(全額保険給付群 66,008 ドル,通常保険給付群 71,778 ドル,相対支出 0.89,95% CI 0.50~1.56,P=0.68).薬剤やその他のサービスに対する患者の支出は減少した(相対支出 0.74,95% CI 0.68~0.80,P<0.001).
心筋梗塞後の処方薬に対する自己負担をなくしても,本試験の主要転帰発生率は有意に減少しなかった.処方薬に対する保険給付の拡大によって,服薬遵守と初回の主要血管イベント発生率が改善し,全体的な医療費が増加することなく患者の支出が減少した.(Aetna 社,米国連邦基金から研究助成を受けた.MI FREEE ClinicalTrials.gov 番号:NCT00566774)