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August 25, 2011 Vol. 365 No. 8

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ドイツで溶血性尿毒症症候群の集団発生を引き起こした大腸菌株の起源
Origins of the E. coli Strain Causing an Outbreak of Hemolytic–Uremic Syndrome in Germany

D.A. Rasko and Others

背景

2011 年 5 月,ドイツでまれな血清型の志賀毒素産生性大腸菌(Escherichia coli)(O104:H4)に起因する,下痢と溶血性尿毒症症候群の大規模な集団発生が起こった.7 月 22 日の時点で,志賀毒素産生性大腸菌に起因する下痢症例は,溶血性尿毒症症候群を伴わない例 3,167 例(死亡 16 例),溶血性尿毒症症候群を伴う例 908 例(死亡 34 例)と多数報告されており,この菌株はほとんどの志賀毒素産生性大腸菌株と比べて著しく病原性が高いことが示唆されている.集団発生株の予備的遺伝子特性解析では,多くの志賀毒素産生性大腸菌株と異なり,今回の株は大腸菌の腸管凝集性病原型に分類すべきであることが示唆された.

方 法

第三世代の単一分子リアルタイム DNA 解析を用いて,ドイツの集団発生株の完全なゲノム配列と,アフリカ由来の下痢と関連する腸管凝集性大腸菌血清型 O104:H4 株 7 株およびその他の血清型に属する腸管凝集性大腸菌参照株 4 株のゲノム配列を決定した.これらの腸管凝集性大腸菌ゲノムと,すでに配列が決定されている大腸菌分離株 40 株のゲノムを用いて,ゲノムワイドな比較を行った.

結 果

腸管凝集性大腸菌 O104:H4 株は密接に関連し,大腸菌株と腸管凝集性大腸菌株の中で独自のクレードを形成している.しかし,ドイツの集団発生株のゲノムは志賀毒素 2 型をコードするプロファージを有し,強い病原性・抗菌薬耐性因子の 2 つが特徴的であるため,他の O104:H4 株のゲノムとの識別が可能である.

結 論

今回の結果から,ドイツで集団発生を引き起こした高病原性の志賀毒素産生性腸管凝集性大腸菌 O104:H4 株は,水平遺伝子交換によって出現したことが示唆される.またこれらの結果から,細菌ゲノムの可塑性がどのようにして新たな病原菌の出現を促すかが明らかにされた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 709 - 17. )