集中治療室における夜間の医師配置に関する無作為化試験
A Randomized Trial of Nighttime Physician Staffing in an Intensive Care Unit
M.P. Kerlin and Others
夜間に集中治療医を配置する診療形態を採用する集中治療室(ICU)が増加しているが,その有効性を示す経験に基づく根拠はない.
大学病院の内科 ICU において,夜間に院内集中治療医を配置する態勢(介入)と,夜間は日勤の集中治療医が電話で相談を受ける態勢(対照)を比較する 1 年間の無作為化試験を行った.連続する 7 日間を 1 ブロックとし,介入戦略または対照戦略に無作為に割り付けた.主要転帰は,患者の ICU 在室期間とした.副次的転帰は,患者の病院滞在期間,ICU 死亡率および院内死亡率,退院処置,ICU 再入室率とした.滞在期間の転帰については,生存時間分析を行い,患者の死亡または他の ICU への転室の時点でデータを打ち切ることとした.
1,598 例を解析対象とした.急性生理的異常・慢性度による重症度評価(APACHE)III スコア(0~299 のスコアで,スコアが高いほど重症であることを示す)の中央値は 67(四分位範囲 47~91),ICU 在室期間の中央値は 52.7 時間(四分位範囲 29.0~113.4),ICU 死亡率は 18%であった.介入期間に搬送されてきた患者では,対照期間に搬送されてきた患者と比較して,夜間集中治療医が対応する日数が多かった(日数の中央値 100% [四分位範囲 67~100] 対 中央値 0% [四分位範囲 0~33],P<0.001).しかし,搬送された日の集中治療医の配置は,ICU 在室期間(ICU 退室までの期間の率比 0.98,95%信頼区間 [CI] 0.88~1.09,P=0.72),ICU 死亡率(相対リスク 1.07,95% CI 0.90~1.28),その他のエンドポイントに有意な影響を及ぼさなかった.夜間に搬送されてきた患者に限定した解析でも同様の結果が示され,対応する医師と転帰について異なる定義を用いた感度分析でも同様の結果が示された.
米国の大学病院の内科 ICU において,夜間に院内集中治療医を配置しても患者転帰は改善しなかった.(ペンシルベニア大学医療システムほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT01434823)