April 10, 2014 Vol. 370 No. 15
駆出率が保持された心不全に対するスピロノラクトン
Spironolactone for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
B. Pitt and Others
左室駆出率が低下した心不全患者の予後は,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬により改善する.われわれは,左室駆出率が保持された心不全患者において,スピロノラクトンの効果を評価した.
無作為化二重盲検試験において,左室駆出率が 45%以上の症候性心不全患者 3,445 例を,スピロノラクトン(15~45 mg/日)群とプラセボ群に割り付けた.主要転帰は,心血管系の原因による死亡,蘇生された心不全,心不全治療のための入院の複合とした.
平均追跡期間 3.3 年で,主要転帰はスピロノラクトン群 1,722 例中 320 例(18.6%)と,プラセボ群 1,723 例中 351 例(20.4%)に発生した(ハザード比 0.89,95%信頼区間 [CI] 0.77~1.04,P=0.14).主要転帰 3 項目のうち,スピロノラクトン群でプラセボ群よりも発生率が有意に低かったのは,心不全による入院のみであった(206 例 [12.0%] 対 245 例 [14.2%],ハザード比 0.83,95% CI 0.69~0.99,P=0.04).全死亡にもあらゆる原因による入院にも,スピロノラクトンによる有意な減少は認められなかった.スピロノラクトンによる治療は,血清クレアチニン値の上昇,高カリウム血症発生率の倍増(18.7% 対 プラセボ群 9.1%)に関連したが,低カリウム血症の減少にも関連した.頻回のモニタリングでは,重篤な有害事象,血清クレアチニン値 3.0 mg/dL(265μmol/L)以上,透析の発生率に有意差は認められなかった.
駆出率が保持された心不全患者では,スピロノラクトンによる治療を行っても,心血管系の原因による死亡,蘇生された心不全,心不全治療のための入院から成る主要複合転帰の発生率は有意には低下しなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.TOPCAT ClinicalTrials.gov 番号:NCT00094302)