April 17, 2014 Vol. 370 No. 16
1990~2010 年の米国における糖尿病関連合併症の発生率の変化
Changes in Diabetes-Related Complications in the United States, 1990–2010
E.W. Gregg and Others
糖尿病成人に対する予防医療はこの数十年で大幅に向上している.われわれは,1990~2010 年の米国における糖尿病関連合併症の発生率の動向を検証した.
全米健康聞取り調査(National Health Interview Survey),全米退院調査(National Hospital Discharge Survey),米国腎臓データシステム(U.S. Renal Data System),米国人口動態統計(National Vital Statistics System)のデータを用いて,1990~2010 年の下肢切断,末期腎不全(ESRD),急性心筋梗塞,脳卒中,高血糖緊急症による死亡の発生率を,年齢を 2000 年の米国民に標準化して比較した.
1990~2010 年に 5 つの合併症すべての発生率が低下した.相対的低下がとくに大きかったのは急性心筋梗塞(-67.8%,95%信頼区間 [CI] -76.2~-59.3)と高血糖緊急症による死亡(-64.4%,95% CI -68.0~-60.9)であり,次いで脳卒中と下肢切断が約半分になり(それぞれ -52.7%と -51.4%),もっとも低下が小さかったのは ESRD であった(-28.3%,95% CI -34.6~-21.6).絶対的減少がもっとも大きかったのは急性心筋梗塞(10,000 人あたり -95.6,95% CI -114.6~-76.6)であり,もっとも小さかったのは高血糖緊急症による死亡(10,000 人あたり -2.7,95% CI -3.0~-2.4)であった.発生率の低下は糖尿病成人のほうが非糖尿病成人よりも大きく,糖尿病関連合併症の相対リスクの低下をもたらした.米国民全体での発生率として表すと,有病率の変化は合併症の発生率にも影響を及ぼすが,急性心筋梗塞の発生率と高血糖緊急症による死亡率は低下したが(それぞれ 10,000 人あたり -2.7 と -0.1),下肢切断,脳卒中,ESRD の発生率は低下しなかった.
糖尿病関連合併症の発生率はこの 20 年間で大幅に低下したが,糖尿病の有病率が上昇し続けているため,大きな疾病負担は存続している.(米国疾病対策予防センターから研究助成を受けた.)