早期敗血症性ショックに対するプロトコールに基づく治療の無作為化試験
A Randomized Trial of Protocol-Based Care for Early Septic Shock
The ProCESS Investigators
10 年以上前に発表された,重症敗血症および敗血症性ショックで救急受診した患者を対象とした単一施設試験では,6 時間以内に中心血行動態が目標値に達するよう静脈内輸液,昇圧薬,強心薬,輸血を適宜行う早期目標指向型治療(EGDT)プロトコールに従って治療された患者では,通常ケアを受けた患者と比較して死亡率が顕著に低下した.われわれは,この知見が一般化できるものなのかどうか,またこのプロトコールのすべての要素が必要かどうかを検討することを目的として試験を行った.
米国の 31 の救急部において,敗血症性ショックを呈する患者を,以下の 3 つの群に無作為に割り付け,6 時間にわたり蘇生を行った:プロトコールに基づく EGDT 群;プロトコールに基づく,中心静脈カテーテル留置,強心薬投与,輸血を必須としない標準治療群;通常ケア群.主要評価項目は 60 日院内死亡率とした.われわれはまず,プロトコールに基づく治療(EGDT 群と標準治療群を合わせて)が通常ケアよりも優れているかどうかを評価し,続いてプロトコールに基づく EGDT がプロトコールに基づく標準治療よりも優れているかどうかを評価した.副次的転帰は,長期死亡率,臓器補助の必要性などとした.
1,341 例を登録し,439 例をプロトコールに基づくEGDT 群,446 例をプロトコールに基づく標準治療群,456 例を通常ケア群に無作為に割り付けた.蘇生戦略は,中心静脈圧と酸素のモニタリングと,静脈内輸液,昇圧薬,強心薬,輸血の使用の点で,有意に異なっていた.60 日までに,プロトコールに基づく EGDT 群の 92 例(21.0%),プロトコールに基づく標準治療群の 81 例(18.2%),通常ケア群の 86 例(18.9%)が死亡した(通常ケアに対するプロトコールに基づく治療の相対リスク 1.04,95%信頼区間 [CI] 0.82~1.31,P=0.83;プロトコールに基づく標準治療に対するプロトコールに基づく EGDT の相対リスク 1.15,95% CI 0.88~1.51,P=0.31).90 日死亡率,1 年死亡率,臓器補助の必要性に有意差は認められなかった.
三次医療機関で行われた多施設共同試験において,救急部で敗血症性ショックと診断された患者に対してプロトコールに基づく蘇生を行っても,転帰は改善しなかった.(米国国立総合医科学研究所から研究助成を受けた.ProCESS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00510835)