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January 23, 2014 Vol. 370 No. 4

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軽度~中等度のアルツハイマー病に対するバピヌズマブの 2 つの第 3 相試験
Two Phase 3 Trials of Bapineuzumab in Mild-to-Moderate Alzheimer’s Disease

S. Salloway and Others

背景

ヒト化抗βアミロイドモノクローナル抗体バピヌズマブ(bapineuzumab)は,アルツハイマー病の治療薬として臨床開発中である.

方 法

軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象とする 2 つの二重盲検無作為化プラセボ対照第 3 相試験を行った.1 つはアポリポ蛋白 E(APOEε4 アレル保有者 1,121 例を対象とし,もう 1 つは非保有者 1,331 例を対象とした.バピヌズマブまたはプラセボを,試験ごとに異なる用量で 13 週ごとに 78 週間点滴静注した.主要評価項目は,アルツハイマー病評価尺度の 11 項目の認知機能下位尺度(ADAS-cog11)のスコア(0~70 で,スコアが高いほど障害が大きいことを示す)と,認知症のための障害評価票(DAD)のスコア(0~100 で,スコアが高いほど障害が小さいことを示す)とした.保有者 1,090 例と非保有者 1,114 例を有効性解析の対象とした.副次的評価項目は,ピッツバーグ化合物 B を用いた陽電子放射断層撮影によるアミロイド画像検査(PIB-PET)所見,脳脊髄液中のリン酸化タウ(p-tau)濃度などとした.

結 果

主要評価項目に群間で有意差は認められなかった.78 週の時点における ADAS-cog11 スコア,DAD スコアのベースラインからの変化の群間差(バピヌズマブ群-プラセボ群)は,保有者を対象とした試験ではそれぞれ -0.2(P=0.80),-1.2(P=0.34)であった.非保有者を対象とした試験では,これらの差は,バピヌズマブ 0.5 mg/kg 投与群では -0.3(P=0.64)および 2.8(P=0.07),1.0 mg/kg 投与群では 0.4(P=0.62)および 0.9(P=0.55)であった.重大な安全性所見として,バピヌズマブ投与患者に浮腫を示すアミロイド関連画像異常が認められた.この異常はバピヌズマブの用量および APOE ε4 アレル数とともに増加し,2.0 mg/kg 投与は中止された.APOE ε4 アレル保有者では PIB-PET と脳脊髄液中のリン酸化タウ濃度に群間で差が認められたが,非保有者では認められなかった.

結 論

アルツハイマー病患者に対するバピヌズマブ投与により,APOE ε4 保有者ではバイオマーカーに差が認められたものの,臨床転帰は改善されなかった.(Janssen Alzheimer Immunotherapy 社,Pfizer 社から研究助成を受けた.Bapineuzumab 301 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00575055,Bapineuzumab 302 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00574132,EudraCT 番号:2009-012748-17)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 370 : 322 - 33. )