November 6, 2014 Vol. 371 No. 19
引継ぎプログラム導入後の医療過誤の変化
Changes in Medical Errors after Implementation of a Handoff Program
A.J. Starmer and Others
ミスコミュニケーションは重大な医療過誤の主な原因である.患者ケアに関する情報の引継ぎを改善するためにデザインされたプログラムを評価した多施設共同研究のデータは不足している.
9 ヵ所の病院においてレジデントの引継ぎ改善プログラムに関する前向き介入研究を実施し,医療過誤,予防可能な有害事象,ミスコミュニケーションの発生率,およびレジデントの業務の流れを評価した.介入は,口頭および書面での引継ぎを標準化するための記憶法,引継ぎとコミュニケーションのトレーニング,能力開発および観察プログラム,プログラムの持続可能性を確保するためのキャンペーンなどであった.過誤の発生率は,積極的監視により評価した.引継ぎは,引継ぎ文書および口頭引継ぎ時の録音を検討することによって評価した.業務の流れは,時間動作観察により評価した.主要転帰は,医療過誤と予防可能な有害事象の 2 項目とした.
患者 10,740 例の入院において,介入前の期間から介入後の期間までで,医療過誤の発生率は 23%低下し(入院 100 件あたり 24.5 対 18.8,P<0.001),予防可能な有害事象の発生率は 30%低下した(入院 100 件あたり 4.7 件 対 3.3 件,P<0.001).予防不可能な有害事象の発生率に有意な変化はみられなかった(入院 100 件あたり 3.0 件と 2.8 件,P=0.79).施設ごとの分析では,9 病院中 6 病院で,医療過誤に有意な減少が認められた.施設全体では,引継ぎ書面および引継ぎ時の口頭コミュニケーションに,あらかじめ規定した重要項目がすべて含まれた頻度は有意に上昇した(書面での引継ぎは 9 項目,口頭での引継ぎは 5 項目;14 項目すべての比較について P<0.001).介入前の期間から介入後の期間までで,口頭での引継ぎ時間(患者 1 人あたりそれぞれ 2.4 分と 2.5 分,P=0.55)と,患者および家族との接触時間やコンピュータ使用時間などのレジデントの業務の流れに有意な変化はみられなかった.
引継ぎプログラムの導入は,医療過誤および予防可能な有害事象の減少と,コミュニケーションの改善に関連し,業務の流れへの悪影響は認められなかった.(米国保健福祉省計画・評価担当副長官室ほかから研究助成を受けた.)