2000~09 年における重症複合免疫不全症に対する移植成績
Transplantation Outcomes for Severe Combined Immunodeficiency, 2000–2009
S.-Y. Pai and Others
原発性免疫不全症治療コンソーシアムは,重症複合免疫不全症(SCID)およびその他の原発性免疫不全症の小児に対する造血細胞移植の成績を解析するために結成された.とくに出生時に SCID であると診断された児を対象とした,より安全で有効な根治療法をデザインするために,良好な移植成績に関連する因子を同定する必要がある.
10 年間(2000~09 年)に,25 施設で移植を受けた SCID の乳児 240 例のデータを後ろ向きに収集した.
HLA 一致同胞ドナーから移植を受けたレシピエントは,代替ドナーから移植を受けたレシピエントと比較して,5 年生存率,免疫グロブリン補充療法を必要としない確率,CD3+T 細胞および IgA の回復率が高かった.一方,ドナータイプにかかわらず,生後 3.5 ヵ月以下で移植を受けた児(94%)と,生後 3.5 ヵ月超で移植を受け,移植前に感染症が認められなかった児(90%),および感染症が消失した児(82%)では生存率が高かった.HLA 一致同胞ドナーがおらず,移植時に活動性の感染症を有していた児では,前処置なしのハプロタイプ一致 T 細胞除去移植レシピエントの生存率がもっとも高かった.生存児では,強度減弱前処置または骨髄破壊的前処置によって,CD3+T 細胞数が 1,000/mm3 を超える確率,免疫グロブリン補充療法を必要としない確率,IgA の回復率が増加したが,CD4+T 細胞の回復やフィトヘマグルチニン誘導性 T 細胞増殖の回復に有意な効果は認められなかった.SCID の遺伝的サブタイプにより,CD3+T 細胞の回復の質への影響が認められたが,生存への影響は認められなかった.
感染症の発現前に SCID が同定された乳児において,HLA 一致同胞以外のドナーからの移植は,良好な生存率と関連していた.患児に症状がなければ,利用可能なすべての移植源によって良好な生存率が期待される.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.)