イングランドの病院における pay for performance が死亡率に及ぼす長期的効果
Long-Term Effect of Hospital Pay for Performance on Mortality in England
S.R. Kristensen and Others
2008 年,イングランド北西部のすべての病院で,病院品質インセンティブデモンストレーション(HQID)に基づく pay-for-performance(医療の質に対する支払い)プログラムが導入され,短期(18 ヵ月)死亡率の低下と関連した.われわれは,「質の向上」と呼ばれる,このプログラムの長期的効果を解析した.
8 疾患(うち 3 疾患は金銭的インセンティブプログラム対象疾患)による入院 1,825,518 件における 30 日院内死亡率を解析した.対象とした病院は,プログラムに参加している北西部の 24 病院と,プログラムに参加していないイングランドの他の地域の 137 病院であった.difference-in-differences 回帰分析を用いて,プログラム導入前 18 ヵ月間のリスク補正後の死亡率と,その後の短期(プログラム導入後の最初の 18 ヵ月)死亡率,長期(続く 24 ヵ月)死亡率を比較した.
短期期間,長期期間を通して,インセンティブプログラム参加病院の質は向上し続け,プログラム対象の 3 疾患の死亡率は低下し続けた.しかし,これらの疾患の患者における死亡率の低下は,対照(プログラムに参加していない)病院のほうが,プログラム参加病院よりも大きかった(0.7 パーセントポイント差,95%信頼区間 [CI] 0.3~1.2).42 ヵ月の追跡期間の終了時には,プログラム参加病院における死亡率の低下は有意ではなくなった(-0.1 パーセントポイント,95% CI -0.6~0.3).短期期間から長期期間にかけて,プログラム対象外の疾患の死亡率は,プログラム参加病院のほうが対照病院よりも低下し(1.2 パーセントポイント差,95% CI 0.4~2.0),プログラム対象外の疾患のケアに肯定的波及効果がもたらされた可能性が示された.
イングランドの pay-for-performance プログラムに参加している病院において,金銭的インセンティブに関連する疾患の短期死亡率に認められた相対的低下は,維持されなかった.