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June 18, 2015 Vol. 372 No. 25

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早期発症の侵襲性感染症の患児における遺伝性 DOCK2 欠損症
Inherited DOCK2 Deficiency in Patients with Early-Onset Invasive Infections

K. Dobbs and Others

背景

複合免疫不全症は,存在する T 細胞が量的または機能的に不足している,T 細胞免疫の先天異常を特徴とする.液性免疫の異常も多くみられる.患者は,重度の感染症または自己免疫疾患,あるいはその両方を発症している.複合免疫不全症にはさまざまなタイプがあるが,特異的な分子的,細胞的,臨床的特徴は明らかにされていない.

方 法

早期発症の侵襲性の細菌・ウイルス感染症で,リンパ球減少症と,T 細胞・B 細胞・ナチュラルキラー(NK)細胞の反応性低下が認められる,血縁関係のない小児 5 例を対象に,遺伝学的・細胞免疫学的研究を行った.2 例は小児期早期に死亡した.同種造血幹細胞移植後,残りの 3 例は T 細胞の機能が正常化し,臨床的改善が認められた.

結 果

これら 5 例で,dedicator of cytokinesis 2 遺伝子(DOCK2)の両アレル変異が同定された.T 細胞で RAC1 活性化が障害されていた.T 細胞,B 細胞,NK 細胞で,ケモカインに誘導される遊走とアクチン重合が障害されていた.NK 細胞の脱顆粒も影響を受けていた.末梢血単核球によるインターフェロンα,インターフェロンλの産生は,ウイルス感染後に低下した.さらに,DOCK2 欠損線維芽細胞では,ウイルス複製が亢進し,ウイルス誘導による細胞死が増加した.これらの状態は,インターフェロンα-2b による治療後,または野生型 DOCK2 の発現後に正常化した.

結 論

常染色体劣性の DOCK2 欠損症は,造血性・非造血性免疫の多面的異常を伴う,新たなメンデル遺伝性疾患である.複合免疫不全症の臨床的特徴を有する児,とくに早期発症の侵襲性感染症を有する児は,常染色体劣性の DOCK2 欠損症である可能性がある.(米国国立衛生研究所ほかから支援を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 372 : 2409 - 22. )