October 29, 2015 Vol. 373 No. 18
再発または治療抵抗性の有毛細胞白血病における BRAF 変異の標的化
Targeting Mutant BRAF in Relapsed or Refractory Hairy-Cell Leukemia
E. Tiacci and Others
BRAF の V600E 変異は,有毛細胞白血病の原因となる遺伝子病変である.われわれは,プリン拮抗薬による治療後に再発したか,プリン拮抗薬に抵抗性を示す有毛細胞白血病患者において,経口 BRAF 阻害薬ベムラフェニブの安全性と活性を評価した.
ベムラフェニブ(960 mg を 1 日 2 回)の 2 件の第 2 相多施設共同単群試験を,イタリアと米国でそれぞれ行った.投与期間の中央値は,イタリアの試験では 16 週間,米国の試験では 18 週間であった.主要評価項目は完全奏効率(イタリア),全奏効率(米国)とした.患者登録は,イタリアでは 2013 年 4 月に完了(28 例)しており,米国では継続中(予定数 36 例中 26 例を登録)である.
全奏効率は,イタリアの試験では中央値 8 週の時点で 96%(評価しえた 26 例中 25 例),米国の試験では中央値 12 週の時点で 100%(24 例中 24 例)であった.完全奏効率はそれぞれ 35%(26 例中 9 例),42%(24 例中 10 例)であった.イタリアの試験では,追跡期間中央値 23 ヵ月の時点における無再発生存期間の中央値は,完全奏効例で 19 ヵ月,部分奏効例で 6 ヵ月であり,無治療生存期間の中央値はそれぞれ 25 ヵ月,18 ヵ月であった.米国の試験では,1 年の時点で無増悪生存率 73%,全生存率 91%であった.薬剤関連有害事象はグレード 1 または 2 が多く,投与量の減量にいたる頻度が高かった有害事象は発疹,関節痛・関節炎であった.続発性皮膚腫瘍(単純切除にて治療)は 50 例中 7 例で発生した.治療終了時に骨髄中の白血病細胞にリン酸化 ERK の発現が依然として高頻度にみられたことから,MEK–ERK 経路の再活性化が抵抗性の機序として示唆される.
再発または治療抵抗性の有毛細胞白血病患者において,短期間の経口ベムラフェニブ投与はきわめて有効であった.(イタリアがん研究協会ほかから研究助成を受けた.EudraCT 登録番号 2011-005487-13,ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01711632)