November 26, 2015 Vol. 373 No. 22
2 型糖尿病患者におけるエンパグリフロジン,心血管転帰および死亡
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes
B. Zinman and Others
2 型糖尿病で心血管リスクが高い患者において,ナトリウム・グルコース共輸送体 2 阻害薬エンパグリフロジンの標準治療への追加が,心血管系の合併症と死亡に及ぼす影響は明らかではない.
患者を,エンパグリフロジン 10 mg を 1 日 1 回投与する群,同 25 mg を投与する群,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要複合転帰は,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中とし,エンパグリフロジン統合群とプラセボ群とで比較解析した.主な副次的複合転帰は,主要転帰に,不安定狭心症による入院を加えたものとした.
7,020 例が治療を受けた(観察期間中央値 3.1 年).主要転帰は,エンパグリフロジン統合群の 4,687 例中 490 例(10.5%)と,プラセボ群の 2,333 例中 282 例(12.1%)で発生した(エンパグリフロジン統合群のハザード比 0.86,95.02%信頼区間 0.74~0.99,優越性の P=0.04).心筋梗塞,脳卒中の発生率に群間で有意差は認められなかったが,エンパグリフロジン統合群ではプラセボ群と比較して,心血管系の原因による死亡率(それぞれ 3.7% 対 5.9%,38%の相対リスクの減少),心不全による入院率(2.7% 対 4.1%,35%の相対リスクの減少),全死因死亡率(5.7% 対 8.3%,32%の相対リスクの減少)が有意に低かった.主な副次的転帰に群間で有意差は認められなかった(優越性の P=0.08).エンパグリフロジン投与例では性器感染症の発症率の上昇が認められたが,その他の有害事象の増加は認められなかった.
2 型糖尿病で心血管イベントのリスクが高い患者において,標準治療にエンパグリフロジンを追加した場合,プラセボを追加した場合と比較して,主要複合心血管転帰の発生率と全死因死亡率が低かった.(Boehringer Ingelheim 社,Eli Lilly 社から研究助成を受けた.EMPA-REG OUTCOME 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01131676)