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August 17, 2017 Vol. 377 No. 7

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エボロクマブの無作為化試験における認知機能
Cognitive Function in a Randomized Trial of Evolocumab

R.P. Giugliano and Others

背景

前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型(PCSK9)阻害薬の臨床試験の知見から,この阻害薬,あるいはその使用がもたらす低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの低値が,認知障害に関連するのではないかという懸念が生じている.

方 法

スタチン療法にエボロクマブを追加する無作為化プラセボ対照試験に参加した患者のサブグループを対象に,ケンブリッジ神経心理検査ソフト(CANTAB)を用いて,認知機能を前向きに評価した.主要評価項目は,実行機能の空間的作業記憶の戦略指標のスコア(4~28 点で,スコアが低いほど戦略と計画が効率的に用いられていることを示す)とした.副次的評価項目は,作業記憶のスコア(0~279 点で,スコアが低いほど誤りが少ないことを示す),エピソード記憶(0~70 点で,スコアが低いほど誤りが少ないことを示す),精神運動速度(100~5,100 msec で,速度が速いほど成績が良好であることを示す)とした.認知機能の評価はベースライン,24 週後,年 1 回,試験終了時に行った.主要解析は,エボロクマブ投与例とプラセボ投与例とで,実行機能の空間的作業記憶の戦略指標のスコアの,ベースラインからの平均変化量における非劣性を比較した.非劣性マージンはプラセボ群のスコアの標準偏差の 20%に設定した.

結 果

1,204 例を中央値 19 ヵ月間追跡した.実行機能の空間的作業記憶の戦略指標(主要評価項目)の粗点における,ベースラインからの経時的な平均(±SD)変化量は,エボロクマブ群 -0.21±2.62 点,プラセボ群 -0.29±2.81 点であった(非劣性の P<0.001,優越性の P=0.85).副次的評価項目である作業記憶のスコア(粗点の変化量:エボロクマブ群 -0.52 点,プラセボ群 -0.93 点),エピソード記憶のスコア(粗点の変化量:-1.53 点,-1.53 点),精神運動速度のスコア(粗点の変化量:5.2 msec,0.9 msec)に,群間で有意差は認められなかった.探索的解析では,LDL コレステロール値と認知機能の変化とのあいだに関連は認められなかった.

結 論

患者にスタチン療法に加えてエボロクマブまたはプラセボを投与した無作為化試験において,中央値 19 ヵ月のあいだの認知機能に群間で有意差は認められなかった.(Amgen 社から研究助成を受けた.EBBINGHAUS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02207634)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 377 : 633 - 43. )