米国における若年女性の若年男性よりも高い肺癌発生率
Higher Lung Cancer Incidence in Young Women Than Young Men in the United States
A. Jemal and Others
先行研究では,米国における肺癌の発生率は若年女性で若年男性よりも高いことが示されている.この傾向は現代の出生コホートでも続いているのか,またその場合,喫煙行動における性差によって十分に説明できるのかは不明である.
全米規模の人口ベースの肺癌発生率を,性別,人種・民族群別,年齢群別(30~34 歳,35~39 歳,40~44 歳,45~49 歳,50~54 歳),出生年別(1945~80 年),暦年での診断時期別(1995~99 年,2000~04 年,2000~09 年,2010~14 年)に検討し,女性の男性に対する発生率比を算出した.また,1970~2016 年の全米健康聞取り調査(National Health Interview Survey)のデータを用いて,喫煙率を調査した.
この 20 年間に,肺癌の年齢別発生率は,すべての人種・民族群で,30~54 歳の男女両方で全般的に低下しているが,男性のほうが急激に低下している.その結果,非ヒスパニック系白人では,
女性の男性に対する発生率比が上昇し,30~34 歳,35~39 歳,40~44 歳,45~49 歳の年齢群では 1.0 を超えていた.たとえば,40~44 歳の白人における女性の男性に対する発生率比は,1995~99 年には 0.88(95%信頼区間 [CI] 0.84~0.92)であったのが,2010~14 年には 1.17(95% CI 1.11~1.23)に上昇した.1965 年以降に出生した非ヒスパニック系白人では,男女別の発生率の逆転が認められた.非ヒスパニック系黒人,ヒスパニック,非ヒスパニック系アジア人・太平洋諸島住民では,いずれも男女別の発生率が近づいたが,ヒスパニックでのみ,男性のほうが高かった発生率が女性のほうが高くなった.1965 年以降に出生した女性の喫煙率は,男性の喫煙率に近づいたものの,全般的には上回ることはなかった.
肺癌発生率は男性のほうが女性よりも高いという歴史的傾向は,1960 年代半ば以降に出生した非ヒスパニック系白人とヒスパニックでは逆転しており,それを喫煙行動における性差で十分に
説明することはできない.若年女性のほうが肺癌発生率が高い原因を特定するにはさらなる研究が必要である.(米国対がん協会から研究助成を受けた.)