冠動脈バイパス術における橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトとの比較
Radial-Artery or Saphenous-Vein Grafts in Coronary-Artery Bypass Surgery
M. Gaudino and Others
冠動脈バイパス術(CABG)に橈骨動脈グラフトを用いた場合,伏在静脈グラフトを用いた場合と比較して良好な術後転帰が得られる可能性がある.しかし,橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトとを比較したこれまでの無作為化対照試験は,単独では臨床転帰の差の検出力が不十分であった.われわれは,CABG に用いる橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトとを比較するため,無作為化対照試験の患者レベルでの統合解析を行った.
6 件の試験を特定した.主要転帰は,死亡,心筋梗塞,再血行再建の複合とした.副次的転帰は,追跡調査時の血管造影上のグラフト開存とした.混合効果 Cox 回帰モデルを用いて,転帰に対する治療効果を推定した.
1,036 例(橈骨動脈グラフト 534 例,伏在静脈グラフト 502 例)を解析対象とした.平均(±SD)追跡期間 60±30 ヵ月の時点で,有害心イベントの発生率は,橈骨動脈グラフトで伏在静脈グラフトよりも有意に低かった(ハザード比 0.67,95%信頼区間 [CI] 0.49~0.90,P=0.01).追跡調査時(平均追跡期間 50±30 ヵ月)の血管造影で,閉塞のリスクも,橈骨動脈グラフトのほうが有意に低いことに関連した(ハザード比 0.44,95% CI 0.28~0.70,P<0.001).伏在静脈グラフトの使用と比較して,橈骨動脈グラフトの使用は,心筋梗塞発生率がわずかに低いこと(ハザード比 0.72,95% CI 0.53~0.99,P=0.04),再血行再建率が低いこと(ハザード比 0.50,95% CI 0.40~0.63,P<0.001)に関連したが,全死因死亡率が低いことには関連しなかった(ハザード比 0.90,95% CI 0.59~1.41,P=0.68).
CABG に橈骨動脈グラフトを用いた場合,伏在静脈グラフトを用いた場合と比較して,追跡 5 年の時点での有害心イベントの発生率が低いことと,開存率が高いことに関連した.(ワイル・コーネル医科大学ほかから研究助成を受けた.)