February 8, 2018 Vol. 378 No. 6
340B 薬価設定プログラムの影響
Consequences of the 340B Drug Pricing Program
S. Desai and J.M. McWilliams
340B 薬価設定プログラムにより,認定を受けた病院は外来処方薬を割引価格で購入することができ,投薬により「利益」が得られている.同プログラムは,病院のプログラム適格性を,低所得入院患者受け入れの割合を反映した不均衡負担病院(DSH)調整率と結び付けることで,十分な医療を受けていない集団に対する医療資源を拡充する狙いがあるが,病院が収益を低所得患者に対するケアの強化に用いるための直接的なインセンティブを与えていない.
メディケアの請求と回帰不連続デザインを用いて,総合急性期病院におけるプログラム適格性の閾値(DSH 率 11.75%超)を利用し,非経口薬の使用頻度が高い 3 つの専門領域について,プログラムが,病院・医師の増強(すなわち,病院が医師による診療を獲得する,または医師を雇用する)と,病院が所有する施設における非経口薬の外来投与に及ぼす影響を推定した.また,低所得患者に対する病院によるケアの提供と,低所得患者の死亡にプログラムが及ぼす影響を評価した.
病院が 340B プログラムに適格であることは,病院が所有する施設で診療する血液腫瘍専門医の 2.3 名増加,すなわちプログラムの認定を受けない場合に予想される血液腫瘍専門医数より 230%多く(P=0.02),眼科医は 1 病院あたり 0.9 名(900%)増加(P=0.08),リウマチ専門医は 1 病院あたり 0.1 名(33%)増加(P=0.84)と関連した.プログラムに適格であることは,病院による非経口薬の請求件数の増加との有意な関連が,血液腫瘍科のメディケア患者(90%増加,P=0.001)と眼科のメディケア患者(177%増加,P=0.03)では認められたが,リウマチ科のメディケア患者(77%増加,P=0.12)では認められなかった.プログラムに適格であることは,血液腫瘍科と眼科における低所得患者の割合の低下と関連し,そして病院による低所得層に対するセーフティネット診療や入院治療の提供と,病院が医療を提供する地域に住む低所得者の死亡率の有意な差とは関連しなかった.
340B プログラムは,血液腫瘍科における病院・医師の増強,血液腫瘍科と眼科における病院での非経口薬投与の増加に関連していた.病院の収益は,低所得患者に対するケア拡大や低所得者の死亡率低下を示す明らかなエビデンスとは関連しなかった.(米国医療研究・品質局ほかから研究助成を受けた.)