September 13, 2018 Vol. 379 No. 11
骨髄異形成症候群に対する移植後の変異クリアランス
Mutation Clearance after Transplantation for Myelodysplastic Syndrome
E.J. Duncavage and Others
同種造血幹細胞移植は,骨髄異形成症候群(MDS)患者に対する唯一の根治的治療である.移植後の病勢進行の分子学的予測因子は明らかにされていない.
骨髄破壊的前処置または強度減弱前処置後に同種造血幹細胞移植を受けた MDS 患者 90 例の,骨髄検体と皮膚検体の配列決定を行った.拡張エクソーム解析を用いて移植前の変異を検出し,また移植後 30 日の時点で採取した骨髄検体の遺伝子型変異に対するエラー修正解析を用いて,変異クリアランスを評価した.この探索研究では,移植後に検出された変異と,病勢進行および生存との関連を評価した.
配列決定により,移植前に,90 例中 86 例(96%)で,妥当性の確認されている体細胞変異が 1 つ以上同定された.移植後 30 日の時点で,この 86 例のうち 32 例(37%)が,最大変異アレル頻度が 0.5%以上(細胞 100 個中ヘテロ接合変異細胞 1 個に相当)を示す変異を 1 つ以上有していた.病勢進行を認めた患者は,認めなかった患者よりも 30 日の時点での最大変異アレル頻度が高かった(最大変異アレル頻度の中央値 0.9% 対 0%,P<0.001).30 日の時点で変異アレル頻度が 0.5%以上の変異が 1 つ以上存在する場合,そのような変異が存在しない場合と比較して,進行のリスクが高いこと(53.1% 対 13.0%,前処置について調整後のハザード比 3.86,95%信頼区間 [CI] 1.96~7.62,P<0.001)と,1 年無増悪生存率が低いこと(31.3% 対 59.3%,前処置について調整後の進行または死亡のハザード比 2.22,95% CI 1.32~3.73,P=0.005)と関連していた.強度減弱前処置を行い,かつ 30 日の時点で変異アレル頻度が 0.5%以上の残存変異を 1 つ以上有する患者は,前処置と変異の状態が他の組合せであった患者と比較して,無増悪生存率が低かった(P≦0.001).多変量解析により,30 日の時点で変異アレル頻度が 0.5%以上の変異が検出された患者は,検出されなかった患者と比較して,進行のリスクが高く(ハザード比 4.48,95% CI 2.21~9.08,P<0.001),1 年無増悪生存率が低いことが確認された(進行または死亡のハザード比 2.39,95% CI 1.40~4.09,P=0.002).
病勢進行のリスクは,移植後 30 日の時点で骨髄中に残存する疾患関連変異が検出された MDS 患者のほうが,変異が検出されなかった患者よりも高かった.(白血病・リンパ腫協会ほかから研究助成を受けた.)