遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスに対する RNAi 治療薬パティシラン
Patisiran, an RNAi Therapeutic, for Hereditary Transthyretin Amyloidosis
D. Adams and Others
パティシラン(patisiran)は,臨床試験中の RNA 干渉(RNAi)治療薬であり,トランスサイレチン合成を特異的に阻害する.
第 3 相試験において,多発ニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス患者を,パティシラン(0.3 mg/kg 体重)を 3 週ごとに静脈内投与する群とプラセボを投与する群に,2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,18 ヵ月の時点における修正ニューロパチー障害スコア+7(mNIS+7;0~304 で,スコアが高いほど機能障害が重度であることを示す)の,ベースラインからの変化量とした.そのほか,Norfolk QOL–糖尿病性神経障害(Norfolk QOL-DN)質問票(-4~136 で,スコアが高いほど QOL が低いことを示す),10 m 歩行試験(歩行速度を m/秒で測定),修正体格指数(BMI)(BMI [体重 {kg}/身長 {m}2]×アルブミン値 [g/L] と定義;値が低いほど栄養状態が不良であることを示す)などを評価した.
225 例を無作為化した(パティシラン群 148 例,プラセボ群 77 例).ベースラインの mNIS+7 の平均(±SD)はパティシラン群 80.9±41.5,プラセボ群 74.6±37.0 であり,18 ヵ月の時点における変化量の最小二乗平均(±SE)は -6.0±1.7 に対し 28.0±2.6 であった(差 -34.0 点,P<0.001).ベースラインの Norfolk QOL-DN スコアの平均(±SD)はパティシラン群 59.6±28.2,プラセボ群 55.5±24.3 であり,18 ヵ月の時点における変化量の最小二乗平均(±SE)は -6.7±1.8 に対し 14.4±2.7 であった(差 -21.1 点,P<0.001).パティシランには,歩行速度と修正 BMI に対する効果も認められた.18 ヵ月の時点で,歩行速度のベースラインからの変化量の最小二乗平均は,パティシラン群 0.08±0.02 m/秒に対しプラセボ群-0.24±0.04 m/秒であり(差 0.31 m/秒,P<0.001),修正 BMI のベースラインからの変化量の最小二乗平均は,-3.7±9.6 に対し -119.4±14.5 であった(差 115.7,P<0.001).パティシラン群の約 20%とプラセボ群の約 10%で,軽度または中等度の投与時反応が認められ,有害事象の全発生率と種類は両群で類似していた.
この試験では,パティシランによって,遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスの複数の臨床症状が改善された.(Alnylam Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.APOLLO 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01960348)