出血性ショックのリスクがある外傷患者に対する航空医療搬送中の病院前血漿輸血
Prehospital Plasma during Air Medical Transport in Trauma Patients at Risk for Hemorrhagic Shock
J.L. Sperry and Others
外傷を負った患者に対し,病院前の環境で標準的な蘇生の開始に加えて病院前血漿輸血を行うことで,出血やショックによる下流の合併症リスクを軽減することができる可能性がある.病院前血漿輸血に関連する有効性,あるいはリスクを示すには,大規模臨床試験のデータが不足している.
出血性ショックのリスクがある外傷患者に対する病院前解凍血漿輸血の有効性と安全性を検討するために,航空医療搬送中の解凍血漿輸血を,標準治療である蘇生処置と比較する第 3 相多施設共同クラスター無作為化実用的優越性臨床試験を行った.30 日死亡率を主要評価項目とした.
501 例を評価した.230 例が血漿輸血を受け(血漿群),271 例が標準治療である蘇生処置を受けた(標準治療群).30 日死亡率は,血漿群のほうが標準治療群よりも有意に低かった(23.2% 対 33.0%,差 -9.8 パーセントポイント,95%信頼区間 -18.6~-1.0,P=0.03).事前に規定した 9 つのサブグループすべてで同様の治療効果が認められた(不均一性の X2 検定 12.21,P=0.79).Kaplan–Meier 曲線では,2 群の分離は早期に,無作為化の 3 時間後に始まり,30 日後まで持続した(log-rank X2 検定 5.70,P=0.02).外傷センターに到着してからの患者のプロトロンビン時間比の中央値は,血漿群のほうが標準治療群よりも低かった(1.2 [四分位範囲 1.1~1.4] 対 1.3 [四分位範囲 1.1~1.6],P<0.001).多臓器不全,急性肺損傷・急性呼吸促迫症候群,院内感染,アレルギー反応・輸血関連反応に群間で有意差は認められなかった.
出血性ショックのリスクがある外傷患者に対する病院前解凍血漿輸血は安全であり,標準治療である蘇生処置と比較して,30 日死亡率もプロトロンビン時間比の中央値も低かった.(米国陸軍医学研究司令部から研究助成を受けた.PAMPer 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01818427)