重症 Covid-19 患者に対する未承認薬レムデシビルの人道的使用
Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19
J. Grein and Others
ウイルス RNA ポリメラーゼを阻害するヌクレオシドアナログのプロドラッグであるレムデシビルは,in vitro で抗 SARS-CoV-2 活性を有することが示されている.
SARS-CoV-2 感染によって引き起こされる疾患 Covid-19 で入院中の患者に,未承認薬の人道的使用(コンパッショネートユース)としてレムデシビルを提供した.SARS-CoV-2 への感染が確認され,室内気で酸素飽和度 94%以下であるか,酸素療法中の患者を対象とした.レムデシビルを 10 日間のコースで,1 日目に 200 mg を静脈内投与し,残りの 9 日間は 1 日 100 mg を投与した.本報告は,2020 年 1 月 25 日~3 月 7 日にレムデシビルの投与を受け,投与後 1 日以上の臨床データのある患者のデータに基づくものである.
レムデシビルの投与を 1 回以上受けた 61 例のうち,8 例のデータは解析しえなかった(投与後のデータなし 7 例,投薬開始日の誤り 1 例).データが解析された 53 例の内訳は,米国の患者 22 例,欧州またはカナダの患者 22 例,日本の患者 9 例であった.ベースラインの時点で,30 例(57%)が人工呼吸管理を受けており,4 例(8%)が体外式膜型人工肺(ECMO)を装着していた.追跡期間中央値 18 日間に,36 例(68%)で酸素療法の状況が改善し,人工呼吸管理を受けていた 30 例では 17 例(57%)が抜管にいたった.25 例(47%)が退院し,7 例(13%)が死亡した.死亡率は侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者で 18%(34 例中 6 例),侵襲的人工呼吸管理を受けていなかった患者で 5%(19 例中 1 例)であった.
重症 Covid-19 で入院中にコンパッショネートユースとしてレムデシビルの投与を受けた患者群では,53 例中 36 例(68%)で臨床的改善が認められた.有効性の評価は,現在進行中のレムデシビル療法の無作為化プラセボ対照試験で行われる予定である.(ギリアド・サイエンシズ社から研究助成を受けた.)