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February 6, 2020 Vol. 382 No. 6

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新生児低血糖症の従来の治療閾値とそれより低い治療閾値との比較
Lower versus Traditional Treatment Threshold for Neonatal Hypoglycemia

A.A.M.W. van Kempen and Others

背景

世界中で,早産児,在胎期間に比して小さい児または大きい児,糖尿病の母親から出生した児など,多くの新生児が脳損傷の予防を目的に低血糖のスクリーニングを受けている.しかし,安全でありながらも過剰治療を避けられる治療閾値についてのコンセンサスはない.

方 法

在胎 35 週以降に出生し,低血糖のリスクがあると判断された,それ以外は健康な新生児 689 例を対象とした多施設共同無作為化非劣性試験で,無症候性の中等度の低血糖の治療に用いる 2 つの閾値を比較した.われわれは,より低い閾値(血糖値 36 mg/dL [2.0 mmol/L] 未満の場合に治療を行う)を用いた管理戦略が,従来の閾値(血糖値 47 mg/dL [2.6 mmol/L] 未満の場合に治療を行う)と比較して,生後 18 ヵ月時の精神運動発達に関して非劣性を示すかどうかを明らかにすることを試みた.精神運動発達の評価には Bayley 乳幼児発達検査第 3 版オランダ語版(Bayley-III-NL;スコアの範囲は 50~150 [平均 {±SD} 100±15] で,高いほど発達していることを示し,7.5 点 [SD の半分] は臨床的に重要な差を示す)を用いた.低閾値群のスコアが従来閾値群よりも 7.5 点以上低かった場合に低閾値群は非劣性であると判断した.

結 果

Bayley-III-NL スコアは,低閾値群の 348 例中 287 例(82.5%)と従来閾値群の 341 例中 295 例(86.5%)で評価された.認知スコアと運動スコアは 2 群で同程度であった(平均スコア [±SE] は低閾値群が 102.9±0.7 [認知] と 104.6±0.7 [運動],従来閾値群が 102.2±0.7 [認知] と 104.9±0.7 [運動]).事前に規定した劣性の境界値は超えなかった.平均血糖値は,低閾値群で 57±0.4 mg/dL(3.2±0.02 mmol/L),従来閾値群で 61±0.5 mg/dL(3.4±0.03 mmol/L)であった.従来閾値群では,低閾値群よりも低血糖エピソードが少なく重症度も低かったが,診断や治療のための侵襲的介入が多かった.低閾値群の重篤な有害事象には,新生児 1 例での(正常血糖時の)痙攣と,死亡 1 例があった.

結 論

無症候性の中等度の低血糖を有するそれ以外は健康な新生児において,血糖値のより低い治療閾値(36 mg/dL)は,生後 18 ヵ月時の精神運動発達に関して,従来の閾値(47 mg/dL)に対し非劣性を示した.(オランダ健康研究開発機構から研究助成を受けた.HypoEXIT 試験:Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN79705768)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 534 - 44. )