February 13, 2020 Vol. 382 No. 7
加工肉に関連した南アフリカにおけるリステリア症の集団発生
Outbreak of Listeriosis in South Africa Associated with Processed Meat
J. Thomas and Others
2017 年に南アフリカでリステリア症の集団発生が同定された.その感染源は不明であった.
疫学,遡及追跡,環境調査を行い,全ゲノムシーケンシングを用いてリステリア菌(Listeria monocytogenes)分離株のタイピングを行った.症例の定義は,2017 年 6 月 11 日~2018 年 4 月 7 日に臨床検査で確定された L. monocytogenes 感染とした.
937 例が同定され,うち 465 例(50%)が妊娠と関連していた.妊娠関連症例の 406 例(87%)は新生児であった.937 例のうち,229 例(24%)は 15~49 歳の患者(妊娠中の患者を除く)であった.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染状況が確認された患者のうち,HIV に感染していたのは妊娠関連症例では 38%(204 例中 77 例),それ以外の患者では 46%(211 例中 97 例)であった.転帰が確認された 728 例のうち,死亡は 193 例(27%)であった.609 例の臨床分離株でシーケンシングが行われ,567 例(93%)がシーケンスタイプ 6(ST6)と同定された.症例対照分析では,ST6 に感染した患者は,ST6 以外に感染した患者と比較してボロニアソーセージ(調理済み加工肉)を摂取していた傾向が強かった(オッズ比 8.55,95%信頼区間 1.66~43.35).ボロニアソーセージと環境サンプルからも ST6 分離株が検出され,これらは,患者からの分離株とともに同じコアゲノム多座配列タイピングのクラスターに属しており,対立遺伝子の相違は 4 ヵ所のみであった.これらの所見から,1 施設で製造されたボロニアソーセージが集団発生の感染源であったことが示された.この施設で製造された調理済み加工肉製品のリコールは,L. monocytogenes ST6 感染症の発生率の急速な低下に関連していた.
この調査により,HIV 感染の有病率が高い中所得国において,L. monocytogenes は妊娠中の女児・女性,および HIV 感染者に不均衡な転帰をもたらす疾患を引き起こすことが示された.全ゲノムシーケンシングは集団発生の発見を容易にし,感染源の同定につながる遡及追跡調査の指針となった.