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February 27, 2020 Vol. 382 No. 9

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同種造血細胞移植における死亡の予測因子としての微生物叢
Microbiota as Predictor of Mortality in Allogeneic Hematopoietic-Cell Transplantation

J.U. Peled and Others

背景

微生物叢の組成と同種造血細胞移植後の臨床転帰との関係が,単一施設での研究で報告されている.ヒトの微生物群集の組成には地域差があり,臨床診療は施設によって異なるため,これらの関連が一般化できるかどうかについては疑問がある.

方 法

4 施設で同種造血細胞移植中の患者から便検体を採取し,微生物叢の組成のプロファイリングを 16S リボソーム RNA 遺伝子シーケンシングを用いて行った.観察研究として,微生物叢の多様性と死亡率との関連を Cox 比例ハザード解析を用いて検討した.コホートの多様性の高い群と低い群への層別化には,ニューヨーク州の 1 研究施設で観察された多様性の中央値を用いた.独立したコホートの解析では,ニューヨーク州の 1 施設をコホート 1 とし,ドイツ,日本,ノースカロライナ州の 3 施設をコホート 2 とした.コホート 1 とそのサブグループでは,移植関連死などの追加の評価項目の解析も行った.

結 果

4 施設で同種造血細胞移植中の 1,362 例の,8,767 個の便検体のプロファイリングを行った.多様性の喪失と 1 つの細菌種の優勢を特徴とする微生物叢崩壊のパターンを観察した.独立したコホートで,腸内細菌叢の多様性の高さは死亡リスクの低さと関連していた(コホート 1:死亡は高多様性群 354 例中 104 例に対し低多様性群 350 例中 136 例,補正ハザード比 0.71,95%信頼区間 [CI] 0.55~0.92;コホート 2:死亡は高多様性群 87 例中 18 例に対し低多様性群 92 例中 35 例,補正ハザード比 0.49,95% CI 0.27~0.90).サブグループ解析では,腸内細菌叢の多様性の低さと,移植関連死および移植片対宿主病に起因する死亡のリスクの高さとの関連が認められた.移植前に採取されたベースライン検体はすでにマイクロバイオーム崩壊の所見を示しており,移植前の多様性の低さは生存率の低さと関連していた.

結 論

同種造血細胞移植中の微生物叢崩壊のパターンは,移植施設と所在地を通して類似していた.パターンの特徴は,多様性の喪失と 1 つの細菌種の優勢であった.好中球生着時の腸内細菌叢の多様性の高さは死亡率の低さと関連していた.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 822 - 34. )