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March 12, 2020 Vol. 382 No. 11

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ICU における人工呼吸管理中の制限的酸素療法
Conservative Oxygen Therapy during Mechanical Ventilation inthe ICU

The ICU-ROX Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group

背景

集中治療室(ICU)で人工呼吸管理を受ける患者は,高い吸入酸素濃度(FIO2)で投与を受け,動脈血酸素分圧が上昇することが多い.酸素の制限的な使用によって酸素曝露を減らし,肺や全身の酸化傷害を軽減することで,人工呼吸器離脱日数(人工呼吸器なしで生存している日数)が増加する可能性がある.

方 法

ICU で,登録した翌日以降に人工呼吸管理が必要になると予想された成人患者 1,000 例を,制限的酸素療法を受ける群と通常酸素療法を受ける群に無作為に割り付けた.2 群で,パルスオキシメータ測定による酸素飽和度(SpO2)の下限は 90%と規定した.制限的酸素療法群では,SpO2 の上限が 97%に達した時点でアラームが鳴るよう設定し,SpO2 が忍容可能な下限を超えた場合に FIO2 を 0.21 に下げた.通常酸素療法群では,FIO2 や SpO2 を制限する特定の値を設定しなかった.主要評価項目は,無作為化から 28 日の時点までの人工呼吸器離脱日数とした.

結 果

人工呼吸器離脱日数は,制限的酸素療法群と通常酸素療法群とで有意差は認められず,中央値はそれぞれ 21.3 日(四分位範囲 0~26.3)と 22.1 日(四分位範囲 0~26.2)であり,絶対差は -0.3 日(95%信頼区間 [CI] -2.1~1.6,P=0.80)であった.制限的酸素療法群は通常酸素療法群よりも ICU で FIO2 を 0.21 とした時間が長く,中央値はそれぞれ 29 時間(四分位範囲 5~78)と 1 時間(四分位範囲 0~17)であり(絶対差 28 時間,95% CI 22~34),制限的酸素療法群は SpO2 が 96%を超えた時間がより短く,中央値はそれぞれ 27 時間(四分位範囲 11~63.5)と 49 時間(四分位範囲 22~112)であった(絶対差 22 時間,95% CI 14~30).180 日の時点で,死亡率は制限的酸素療法群で 35.7%,通常酸素療法群で 34.5%であり,未補正オッズ比は 1.05(95% CI 0.81~1.37)であった.

結 論

ICU で人工呼吸管理を受ける成人において,制限的酸素療法を用いても,通常の酸素療法と比較して人工呼吸器離脱日数に有意な影響を及ぼさなかった.(ニュージーランド保健研究評議会から研究助成を受けた.ICU-ROX 試験:Australian and New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12615000957594)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 989 - 98. )