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July 30, 2020 Vol. 383 No. 5

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治療用ヒト抗黄熱ウイルス抗体の第 1 相試験
Phase 1 Trial of a Therapeutic Anti–Yellow Fever Virus Human Antibody

J.G. Low and Otherss

背景

黄熱は,ワクチンの量が不十分であり,治療薬がないことから,万が一このウイルスがサハラ以南のアフリカや南米以外に広がった場合,グローバルヘルスは危険にさらされる.

方 法

この臨床試験の第 1a 相では,完全ヒト IgG1 抗黄熱ウイルスモノクローナル抗体 TY014 の安全性,副作用プロファイル,薬物動態を評価した.二重盲検の第 1b 相では,黄熱生ワクチン(YF17D-204,スタマリル [Stamaril])の投与に関連するウイルス血症の改善における TY014 の有効性をプラセボと比較評価した.主要安全性転帰は,注入後 1 時間以内および試験期間中に報告された有害事象とした.主要有効性転帰は,参加者全例で注入後 48 時間以内にウイルス血症が陰性となる TY014 の用量とした.

結 果

健康な参加者 27 例が第 1a 相,10 例が第 1b 相に登録された.第 1a 相では,22 例で TY014 は最大用量の 20 mg/kg 体重まで漸増された.第 1a 相と第 1b 相の期間を合わせて,注入後 1 時間以内の有害事象は,TY014 の投与を受けた 27 例中 1 例で発現し,プラセボの投与を受けた 10 例では発現しなかった.試験期間中に 1 件以上の有害事象が発現したのは,TY014 の投与を受けた 22 例と,プラセボの投与を受けた 8 例であった.TY014 の半減期の平均は約 12.8 日であった.第 1b 相では,注入から 48 時間後の時点で,TY014 の開始用量 2 mg/kg で投与を受けた 5 例のうち,YF17D-204 のウイルス血症が検出可能な例はなく,これらの参加者は試験期間を通じてウイルス血症の消失が持続した.ウイルス血症は,注入から 48 時間後の時点で,プラセボの投与を受けた 5 例のうち 2 例で観察され,72 時間の時点ではプラセボ群のさらに 2 例で観察された.黄熱ワクチンに関連する症状は TY014 群のほうがプラセボ群よりも頻度が低かった.

結 論

TY014 の第 1 相試験では,懸念される安全性シグナルは検出されず,臨床的利益の可能性が示唆された.この可能性については第 2 相試験でさらに評価する必要がある.(Tysana 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03776786)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 452 - 9. )