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September 3, 2020 Vol. 383 No. 10

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筋萎縮性側索硬化症に対するフェニル酪酸ナトリウム–タウルウルソジオールの試験
Trial of Sodium Phenylbutyrate–Taurursodiol for Amyotrophic Lateral Sclerosis

S. Paganoni and Others

背景

フェニル酪酸ナトリウムとタウルウルソジオール(taurursodiol)は,実験モデルでは神経細胞死を抑制することが示されている.筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対するこの 2 つの化合物の併用の有効性と安全性は明らかにされていない.

方 法

多施設共同無作為化二重盲検試験で,ALS 確実(definite)に該当する発症後 18 ヵ月以内の患者を登録した.患者を,フェニル酪酸ナトリウム–タウルウルソジオールを投与する群(フェニル酪酸ナトリウム 3 g とタウルウルソジオール 1 g を 1 日 1 回 3 週間,その後は 1 日 2 回)と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,24 週間における「筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)」(0~48 で,スコアが高いほど機能が良好であることを示す)の合計スコアの低下率とした.副次的評価項目は,等尺性筋力・血漿中リン酸化軸索ニューロフィラメント H サブユニット濃度・静的肺活量の低下率,死亡・気管切開・永続的な人工換気までの期間,死亡・気管切開・永続的な人工換気・入院までの期間とした.

結 果

ALS 患者 177 例が適格性のスクリーニングを受け,137 例がフェニル酪酸ナトリウム–タウルウルソジオール群(89 例)またはプラセボ群(48 例)に無作為に割り付けられた.修正 intention-to-treat 解析では,ALSFRS-R スコアの変化率の平均は実薬群で -1.24 点/月,プラセボ群で -1.66 点/月であった(差 0.42 点/月,95%信頼区間 0.03~0.81,P=0.03).副次的評価項目に 2 群間で有意差は認められなかった.実薬による有害事象は主に消化器系であった.

結 論

フェニル酪酸ナトリウム–タウルウルソジオールにより,24 週間の期間における ALSFRS-R スコアで測定した機能の低下が,プラセボよりも遅延した.副次的評価項目に 2 群間で有意差は認められなかった.ALS 患者に対するフェニル酪酸ナトリウム–タウルウルソジオールの有効性と安全性を評価するには,より長期かつ大規模な試験が必要である.(アミリクス ファーマシューティカルズ社ほかから研究助成を受けた.CENTAUR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03127514)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 919 - 30. )