March 18, 2021 Vol. 384 No. 11
発作性夜間ヘモグロビン尿症に対するペグセタコプランとエクリズマブとの比較
Pegcetacoplan versus Eculizumab in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria
P. Hillmen and Others
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は,慢性的な補体介在性溶血を特徴とする,まれな後天性疾患である.補体 C5 の阻害により,未治療の PNH における血管内溶血はコントロールされるが,血管外溶血に対処することはできない.ペグセタコプラン(pegcetacoplan)は,近位補体蛋白 C3 を標的とするペグ化ペプチドであり,血管内と血管外の両方の溶血を阻害する可能性がある.
PNH を有し,エクリズマブによる治療にもかかわらずヘモグロビン値が 10.5 g/dL 未満の成人を対象に,ペグセタコプランの有効性と安全性をエクリズマブと比較評価する第 3 相非盲検対照試験を行った.全例にペグセタコプランとエクリズマブを投与する 4 週間の導入期間のあと,ペグセタコプラン単剤を皮下投与する群(41 例)と,エクリズマブを静脈内投与する群(39 例)に患者を無作為に割り付けた.主要評価項目は,ヘモグロビン値のベースラインから 16 週時点までの変化量の平均とした.追加的な溶血の臨床マーカーと血液学的マーカー,および安全性を評価した.
ペグセタコプランは,ヘモグロビン値のベースラインから 16 週時点までの変化量に関してエクリズマブよりも優れており,補正後の(最小二乗)平均差は 3.84 g/dL(P<0.001)であった.輸血が不要となったのは,ペグセタコプランの投与を受けた患者では 35 例(85%)であったのに対し,エクリズマブの投与を受けた患者では 6 例(15%)であった.ペグセタコプランのエクリズマブに対する非劣性は,網赤血球絶対数の変化量については示されたが,乳酸脱水素酵素値の変化量については示されなかった.慢性疾患治療の機能評価・疲労スコアは,ペグセタコプラン群ではベースラインからの改善がみられた.ペグセタコプラン群とエクリズマブ群で,治療期間中に発生した有害事象で頻度が高かったのは,注射部位反応(37% 対 3%),下痢(22% 対 3%),ブレイクスルー溶血(10% 対 23%),頭痛(7% 対 23%),疲労(5% 対 15%)であった.髄膜炎菌感染症はいずれの群にも生じなかった.
ペグセタコプランは,血管内溶血・血管外溶血を含む広範な溶血コントロールをもたらし,PNH 患者のヘモグロビン値と臨床的・血液学的転帰の改善に関して,エクリズマブよりも優れていた.(アペリス・ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.PEGASUS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03500549)