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January 7, 2021 Vol. 384 No. 1

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急性移植片対宿主病の予防に用いるジペプチジルペプチダーゼ 4 阻害薬
Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibition for Prophylaxis of Acute Graftversus-Host Disease

S.S. Farag and Others

背景

ジペプチジルペプチダーゼ 4(DPP-4;CD26 としても知られる)は,T 細胞に発現する膜貫通型受容体であり,T 細胞の活性化において共刺激分子として機能する.モデルマウスでは,CD26 のダウンレギュレーションにより移植片対宿主病(GVHD)が予防され,移植片対腫瘍効果は維持された.シタグリプチンを用いて DPP-4 を阻害することで,同種幹細胞移植後の急性 GVHD が予防される可能性があるかどうかは不明である.

方 法

2 段階の第 2 相臨床試験を行い,シタグリプチンをタクロリムス+シロリムスと併用することで,100 日目までにグレード II~IV の急性 GVHD を発症する割合が 30%から 15%未満に低下するかどうかを検討した.患者は骨髄破壊的前処置後に動員末梢血幹細胞移植を受けた.シタグリプチン 1 回 600 mg,12 時間ごとの経口投与を移植前日に開始し,移植後 14 日目まで行った.

結 果

評価しえた 36 例は,年齢中央値 46 歳(20~59 歳)であり,HLA が適合する血縁者または非血縁者のドナーから移植を受けた.36 例中 2 例が 100 日目までに急性 GVHD を発症し,グレード II~IV の GVHD の発症割合は 5%(95% 信頼区間 [CI] 1~16),グレード III または IV の GVHD の発症割合は 3%(95% CI 0~12)であった.1 年非再発死亡割合は 0 であった.1 年の時点で,再発の累積発生割合は 26%(95% CI 13~41),慢性 GVHD の累積発症割合は 37%(95% CI 22~53)であった.1 年無 GVHD・無再発生存割合は 46%(95% CI 29~62)であった.毒性は,同種幹細胞移植が施行される患者にみられるものと同様であった.

結 論

この非無作為化試験では,シタグリプチンをタクロリムス+シロリムスと併用することで,骨髄破壊的同種造血幹細胞移植後 100 日目までにグレード II~IV の急性 GVHD を発症する割合が低くなった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02683525)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 11 - 9. )