April 15, 2021 Vol. 384 No. 15
肝移植における低温機械灌流保存 ― 無作為化試験
Hypothermic Machine Perfusion in Liver Transplantation — A Randomized Trial
R. van Rijn and Others
心停止ドナー肝の移植は非吻合部胆管狭窄のリスク上昇を伴う.肝臓の低温酸素化機械灌流保存により胆管合併症の発生率を低下させられる可能性があるが,前向き比較試験のデータは限られている.
多施設共同比較試験で,心停止ドナー肝移植を受ける患者を,従来の単純冷却保存を行ったあと,低温酸素化機械灌流保存を行った肝臓を移植する群(機械灌流保存群)と,従来の単純冷却保存のみを行った肝臓を移植する群(対照群)に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,移植後 6 ヵ月以内の非吻合部胆管狭窄の発生率とした.副次的エンドポイントは,そのほかのグラフト関連合併症,全身合併症などとした.
160 例を組み入れ,うち 78 例が機械灌流保存を行った肝臓の移植を受け,78 例が単純冷却保存のみを行った肝臓の移植を受けた(4 例はこの試験で肝移植を受けなかった).非吻合部胆管狭窄は,機械灌流保存群の 6%と対照群の 18%に発生した(リスク比 0.36,95%信頼区間 [CI] 0.14~0.94,P=0.03).再灌流後症候群は,機械灌流保存肝移植レシピエントの 12%と対照群の 27%に発生した(リスク比 0.43,95% CI 0.20~0.91).早期の移植肝機能不全は,機械灌流保存肝の 26%に発生したのに対し,対照肝では 40%に発生した(リスク比 0.61,95% CI 0.39~0.96).非吻合部胆管狭窄の累積治療数は,機械灌流保存群では対照群の約 1/4 であった.有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.
心停止ドナー肝の低温酸素化機械灌流保存により,従来の単純冷却保存のみを行った場合と比較して,移植後の非吻合部胆管狭窄のリスクが低下した.(フォンズ ナッツオーラ社から研究助成を受けた.DHOPE-DCD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02584283)