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April 22, 2021 Vol. 384 No. 16

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転移性トリプルネガティブ乳癌に対するサシツズマブ ゴビテカン
Sacituzumab Govitecan in Metastatic Triple-Negative Breast Cancer

A. Bardia and Others

背景

転移性トリプルネガティブ乳癌患者の予後は不良である.乳癌の大部分にヒト栄養膜細胞表面抗原 2(Trop-2)が発現している.サシツズマブ ゴビテカン(sacituzumab govitecan)は,Trop-2 を標的とする抗体に,特許を取得した加水分解性リンカーを介して SN-38(トポイソメラーゼ I 阻害薬)を結合させた抗体薬物複合体である.

方 法

再発または難治性の転移性トリプルネガティブ乳癌患者を対象とした無作為化第 3 相試験で,サシツズマブ ゴビテカンと,医師が選択した単剤化学療法(エリブリン,ビノレルビン,カペシタビン,ゲムシタビンのいずれか)とを比較した.主要エンドポイントは,脳転移のない患者における無増悪生存(盲検下の独立した中央判定委員会が評価)とした.

結 果

脳転移のない患者 468 例を,サシツズマブ ゴビテカン群(235 例)と化学療法群(233 例)に無作為に割り付けた.年齢中央値は 54 歳であり,全例にタキサンの使用歴があった.無増悪生存期間の中央値はサシツズマブ ゴビテカン群 5.6 ヵ月(95%信頼区間[CI] 4.3~6.3,イベント数 166 件),化学療法群 1.7 ヵ月(95% CI 1.5~2.6,イベント数 150 件)であった(増悪または死亡のハザード比 0.41,95% CI 0.32~0.52,P<0.001).全生存期間の中央値はサシツズマブ ゴビテカン群 12.1 ヵ月(95% CI 10.7~14.0),化学療法群 6.7 ヵ月(95% CI 5.8~7.7)であった(死亡のハザード比 0.48,95% CI 0.38~0.59,P<0.001).客観的奏効割合は,サシツズマブ ゴビテカン群 35%,化学療法群 5%であった.グレード 3 以上の重要な治療関連有害事象として,好中球減少(サシツズマブ ゴビテカン群 51%と化学療法群 33%),白血球減少(10%と 5%),下痢(10%と 1%未満),貧血(8%と 5%),発熱性好中球減少症(6%と 2%)があった.有害事象による死亡は各群 3 例あり,サシツズマブ ゴビテカンの投与に関連すると考えられたものはなかった.

結 論

転移性トリプルネガティブ乳癌患者のうち,サシツズマブ ゴビテカンの投与を受けた患者は,単剤化学療法を受けた患者よりも無増悪生存期間と全生存期間が有意に長かった.骨髄抑制と下痢の発現頻度は,サシツズマブ ゴビテカン群のほうが単剤化学療法群よりも高かった.(イミュノメディクス社から研究助成を受けた.ASCENT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02574455,EudraCT 登録番号 2017-003019-21)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 1529 - 41. )