April 29, 2021 Vol. 384 No. 17
貧血を有する透析導入前の慢性腎臓病患者に対するバダデュスタット
Vadadustat in Patients with Anemia and Non–Dialysis-Dependent CKD
G.M. Chertow and Others
バダデュスタットは経口低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素阻害薬である.この薬剤クラスは HIF を安定化し,エリスロポエチンと赤血球の産生を刺激する.
赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴がなく,ヘモグロビン値 10 g/dL 未満の透析導入前の慢性腎臓病(NDD-CKD)患者と,ESA による治療歴があり,ヘモグロビン値 8~11 g/dL(米国)または 9~12 g/dL(米国以外)の NDD-CKD 患者を対象とした 2 件の第 3 相無作為化非盲検実薬対照非劣性試験で,バダデュスタットを,ESA であるダルベポエチン アルファと比較した.主要安全性エンドポイントは主要有害心血管イベント(MACE;全死因死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中の複合)の初回発生とし,2 試験を統合して生存時間(time-to-event)解析で評価した.副次的安全性エンドポイントは拡大 MACE(MACE に,心不全または血栓塞栓イベントによる入院を追加)などとした.各試験の主要有効性エンドポイントはヘモグロビン値のベースラインから 24~36 週目までの変化量の平均,重要な副次的有効性エンドポイントは同 40~52 週目までの変化量の平均とした.
2 試験で,ESA による治療歴のない NDD-CKD 患者 1,751 例と ESA による治療歴のある NDD-CKD 患者 1,725 例が無作為化された.バダデュスタットの投与を受けた 1,739 例とダルベポエチン アルファの投与を受けた 1,732 例を対象としたプール解析では,MACE のハザード比は 1.17(95%信頼区間 [CI] 1.01~1.36)であり,事前に設定した非劣性マージンの 1.25 を満たさなかった.24~36 週目までのヘモグロビン値の変化量の群間差の平均は,ESA による治療歴のない患者を対象とした試験では 0.05 g/dL(95% CI -0.04~0.15),ESA による治療歴のある患者を対象とした試験では -0.01 g/dL(95% CI -0.09~0.07)であり,事前に設定した非劣性マージンの -0.75 g/dL を満たした.
NDD-CKD 患者において,バダデュスタットは,ダルベポエチン アルファに対して,事前に設定した血液学的有効性の非劣性基準を満たしたが,心血管安全性の非劣性基準は満たさなかった.(アケビア セラピューティクス社,大塚製薬社から研究助成を受けた.PRO2TECT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02648347,NCT02680574)