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April 29, 2021 Vol. 384 No. 17

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帝王切開後の出血を予防するためのトラネキサム酸
Tranexamic Acid for the Prevention of Blood Loss after Cesarean Delivery

L. Sentilhes and Others

背景

トラネキサム酸の予防投与は,帝王切開後の分娩後出血量減少と関連することがいくつかの小規模試験で示されているが,この臨床の場における有益性のエビデンスはまだ決定的なものではない.

方 法

多施設共同二重盲検無作為化比較試験で,分娩前または分娩中に帝王切開が決定された妊娠 34 週以降の女性を,子宮収縮薬の予防的静注に加えて,トラネキサム酸(1 g)の投与を受ける群と,プラセボの投与を受ける群に割り付けた.主要転帰は分娩後出血とし,計算で求めた推定出血量が 1,000 mL を超える,または分娩後 2 日以内に赤血球輸血が行われることと定義した.副次的転帰は重量法による推定出血量,医療者評価による臨床的に重要な分娩後出血,子宮収縮薬の追加投与,分娩後輸血などとした.

結 果

無作為化された 4,551 例のうち 4,431 例で帝王切開が行われ,うち 4,153 例(93.7%)で主要転帰のデータが得られた.主要転帰は,トラネキサム酸群の 2,086 例中 556 例(26.7%)とプラセボ群の 2,067 例中 653 例(31.6%)に発生した(補正リスク比 0.84,95%信頼区間 [CI] 0.75~0.94,P=0.003).重量法による推定出血量の平均や,医療者評価による臨床的に重要な分娩後出血,子宮収縮薬の追加投与,分娩後輸血があった女性の割合に,群間で有意差は認められなかった.分娩後 3 ヵ月以内に血栓塞栓イベントが発生したのは,トラネキサム酸の投与を受けた女性の 0.4%(2,049 例中 8 例)とプラセボの投与を受けた女性の 0.1%(2,056 例中 2 例)であった(補正リスク比 4.01,95% CI 0.85~18.92,P=0.08).

結 論

帝王切開が行われ子宮収縮薬の予防投与を受けた女性にトラネキサム酸を投与すると,計算で求めた推定出血量が 1,000 mL を超える割合,または分娩後 2 日以内に赤血球輸血が行われる割合がプラセボよりも有意に低くなったが,出血に関連する副次的臨床転帰の発生率は低くならなかった.(フランス保健省から研究助成を受けた.TR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03431805)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 1623 - 34. )