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June 10, 2021 Vol. 384 No. 23

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デング熱制御を目的とするボルバキア感染蚊の投入の有効性
Efficacy of Wolbachia-Infected Mosquito Deployments for the Control of Dengue

A. Utarini and Others

背景

共生細菌 Wolbachia pipientiswMel 株に感染したネッタイシマカ(Aedes aegypti)は,野生型のネッタイシマカよりもデングウイルス感染に対する感受性が低い.

方 法

インドネシアのジョグジャカルタで,デング熱制御を目的として,wMel に感染したネッタイシマカを放つクラスター無作為化試験を行った.12 の地理的クラスターを wMel 感染ネッタイシマカの投入(介入クラスター)に,12 のクラスターを非投入(対照クラスター)に無作為に割り付けた.現地の蚊の防除対策はすべてのクラスターで通常どおり実施された.介入の有効性評価には,検査陰性者を対照とするデザインを用いた.鑑別困難な急性熱性疾患で現地のプライマリケア診療所を受診した 3~45 歳の患者を組み入れた.臨床検査を用いて,ウイルス学的に確認されたデング熱(VCD)を有する参加者と,検査陰性の対照者を特定した.主要エンドポイントは,デングウイルスのすべての血清型による重症度を問わない有症状の VCD とした.

結 果

介入クラスターへの wMel の浸透(introgression)に成功した後,8,144 例を組み入れた.介入クラスターには 3,721 例,対照クラスターには 4,423 例が居住していた.intention-to-treat 解析によると,VCD は,介入クラスターの 2,905 例中 67 例(2.3%)と対照クラスターの 3,401 例中 318 例(9.4%)に発生した(VCD の総オッズ比 0.23,95%信頼区間 [CI] 0.15~0.35,P=0.004).介入による防御効果は 77.1%(95% CI 65.3~84.9)であり,デングウイルスの 4 つの血清型別の防御効果も同程度であった.VCD による入院の発生率は,介入クラスターに居住する参加者(2,905 例中 13 例 [0.4%])のほうが,対照クラスターに居住する参加者(3,401 例中 102 例 [3.0%])よりも低かった(防御効果 86.2%,95% CI 66.2~94.3).

結 論

ネッタイシマカ集団への wMel の浸透は,有症状のデング熱の発生率低下に有効であり,デング熱による入院を減少させた.(タヒジャ財団ほかから研究助成を受けた.AWED 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03055585,Indonesia Registry 登録番号 INA-A7OB6TW)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 2177 - 86. )