HIV 感染者における剖検で確認された心臓突然死と心筋線維化
Sudden Cardiac Death and Myocardial Fibrosis, Determined by Autopsy, in Persons with HIV
Z.H. Tseng and Others
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者において,剖検で確認された心臓突然死および不整脈による突然死の発生率は,明確には確立されていない.
2011 年 2 月 1 日~2016 年 9 月 16 日に発生した,18~90 歳の HIV 感染が確認されている人・いない人における院外心停止による死亡すべてを前向きに同定し,包括的な剖検,毒性学的検査,組織学的検査を行った.心臓突然死と不整脈による突然死の発生率を群間で比較した.
HIV 感染者の予期せぬ死亡 610 例のうち,院外心停止による死亡は 109 例あった.そのうち世界保健機関の心臓突然死と推定される基準を満たしたのは 48 例で,不整脈が原因であったのはその半数以下(22 例)であった.2011 年 2 月 1 日~2014 年 3 月 1 日に,HIV 感染が確認されていない人では,心臓突然死と推定される死亡が 505 例発生した.心臓突然死と推定される死亡の発生率は,HIV 感染が確認されている人で 100,000 人年あたり 53.3 例,確認されていない人では 100,000 人年あたり 23.7 例であった(発生率比 2.25,95%信頼区間 [CI] 1.37~3.70).不整脈による突然死の発生率は,100,000 人年あたりそれぞれ 25.0 件と 13.3 件であった(発生率比 1.87,95% CI 0.93~3.78).心臓突然死と推定されたすべての死亡のうち,潜在的な薬物の過量摂取による死亡は,HIV 感染が確認されている人のほうが,確認されていない人よりも多かった(34% 対 13%).組織学的検査における心筋間質の線維化の程度は,HIV 感染者のほうが,HIV 感染が確認されていない人よりも高度であった.
この剖検研究では,心臓突然死と推定される死亡と心筋線維化の発生率は,HIV 感染者のほうが,HIV 感染が確認されていない人よりも高かった.HIV 感染者における心臓突然死とみられる死亡の 1/3 は,潜在的な薬物の過量摂取が原因であった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.)