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August 19, 2021 Vol. 385 No. 8

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変異 PNLDC1,piRNA プロセシング異常,無精子症
Variant PNLDC1, Defective piRNA Processing, and Azoospermia

L. Nagirnaja and Others

背景

P-element–induced wimpy testis(PIWI)相互作用 RNA(piRNA)は,短い(21~35 個のヌクレオチドから成る)ノンコーディング RNA であり,生殖細胞でのみ検出される.生殖細胞において,piRNA は転移因子の異常発現と,減数分裂期以降の遺伝子発現を制御している.ポリ(A)特異的 RNase 様ドメイン含有 1(PNLDC1)は piRNA のプロセシングに不可欠な蛋白であり,piRNA の 3' 末端をトリミングする.マウスでこれを欠損させると,無精子症と雄性不妊症が引き起こされる.

方 法

非閉塞性無精子症と診断された男性 924 例の DNA サンプルでエクソーム解析を行った.精巣生検検体は,組織学的検査,免疫組織化学的検査,in situ ハイブリダイゼーション,定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法,低分子 RNA 配列解析を用いて分析した.

結 果

血縁関係のない非閉塞性無精子症の男性 4 例(中東系 3 例)に,PNLDC1 の変異が認められた.患者 1 は,両アレルのストップゲイン変異 p.R452Ter(rs200629089;マイナーアレル頻度 0.00004),患者 2 は,両アレルの新規ミスセンス変異 p.P84S,患者 3 は,2 つの複合ヘテロ接合性変異 p.M259T(rs141903829;マイナーアレル頻度0.0007)と p.L35PfsTer3(rs754159168;マイナーアレル頻度 0.00004),患者 4 は,両アレルの標準的なスプライス受容部位の新規変異 c.607-2A→T を有していた.精巣の組織学的所見では,一貫して,エラーの頻度が高い減数分裂と精子形成停止が認められ,分化段階がもっとも進んだ生殖細胞集団は Sa に分類される円形精子細胞であった.4 例の精巣細胞では,PNLDC1 のほか,piRNA プロセシング蛋白である PIWIL1,PIWIL4,MYBL1,TDRKH の遺伝子および蛋白の発現が大幅に低下していた.さらに,PNLDC1 変異を有する男性では,piRNA の長さの分布とパキテン期 piRNA の数が有意に変化していた.

結 論

今回の結果は,不完全な piRNA プロセシングが,男性の減数分裂と精子形成の機序に直接的な影響を及ぼしていることを示しており,これが最終的に男性不妊症につながっている.(デンマークイノベーション基金ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 707 - 19. )