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March 17, 2022 Vol. 386 No. 11

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血友病 A に対するバロクトコジーン ロクサパルボベク遺伝子治療
Valoctocogene Roxaparvovec Gene Therapy for Hemophilia A

M.C. Ozelo and Others

背景

バロクトコジーン ロクサパルボベク(valoctocogene roxaparvovec:AAV5-hFVIII-SQ)は,肝特異的プロモーターを利用した凝固第 VIII 因子の相補的 DNA を有する,アデノ随伴ウイルス 5(AAV5)ベースの遺伝子治療ベクターである.この治療の有効性と安全性は,以前に,重症血友病 A の男性を対象とした第 1・2 相用量漸増試験で評価されている.

方 法

第 VIII 因子活性 1 IU/dL 以下と定義した重症血友病 A の男性を対象として,バロクトコジーン ロクサパルボベクの有効性と安全性を評価する非盲検単群多施設共同第 3 相試験を行った.18 歳以上で,既存の抗 AAV5 抗体または第 VIII インヒビターの既往歴がなく,第 VIII 因子濃縮製剤の定期補充療法を受けていた参加者に,6×1013 ベクターゲノム/kg 体重のバロクトコジーン ロクサパルボベクを単回注入した.主要エンドポイントは,注入後 49~52 週の時点での,第 VIII 因子活性(合成基質法で測定)のベースラインからの変化量とした.副次的エンドポイントは,第 VIII 因子濃縮製剤の使用および出血エピソードの年間発生率における変化量などとした.安全性は,有害事象と臨床検査結果で評価した.

結 果

全体で 134 例が注入を受け,51 週間を超える追跡調査を完了した.ヒト免疫不全ウイルス陰性の 132 例では,49~52 週の時点で第 VIII 因子活性がベースラインから平均で 41.9 IU/dL(95%信頼区間 [CI] 34.1~49.7,P<0.001,変化量の中央値 22.9 IU/dL,四分位範囲 10.9~61.3)上昇していた.前向き非介入試験から登録された 112 例では,注入後 4 週目を過ぎての第 VIII 因子濃縮製剤の使用,および治療された出血の年間発生率が,平均でそれぞれ 98.6%と 83.8%低下した(両比較について P<0.001).1 件以上の有害事象が全例で発現し,134 例中 22 例(16.4%)では重篤な有害事象が報告された.アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇が 134 例中 115 例(85.8%)で認められ,免疫抑制薬により管理された.そのほかに頻度の高かった有害事象は,頭痛(38.1%),悪心(37.3%),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇(35.1%)であった.第 VIII 因子インヒビターと血栓症はいずれの参加者にもみられなかった.

結 論

重症血友病 A 患者において,バロクトコジーン ロクサパルボベク治療は内因性第 VIII 因子の産生をもたらし,第 VIII 因子の定期補充療法と比較して出血と第 VIII 因子濃縮製剤の使用を有意に減少させた.(バイオマリン ファーマシューティカル社から研究助成を受けた.GENEr8-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03370913)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 1013 - 25. )