April 14, 2022 Vol. 386 No. 15
高リスクの入院していない成人 Covid-19 患者に対する経口ニルマトレルビル
Oral Nirmatrelvir for High-Risk, Nonhospitalized Adults with Covid-19
J. Hammond and Others
ニルマトレルビルは,経口投与可能な,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)メインプロテアーゼ(Mpro)阻害薬であり,in vitro で強力な抗汎ヒトコロナウイルス活性を示す.
第 2・3 相二重盲検無作為化比較試験で,症状を伴う新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に罹患した,重症化リスクの高い,ワクチン未接種で入院していない成人患者を,ニルマトレルビル 300 mg+リトナビル(薬物動態増強薬)100 mg を 12 時間ごとに 5 日間投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.28 日目までの Covid-19 関連入院または全死因死亡,ウイルス量,安全性を評価した.
2,246 例を無作為化し,1,120 例にニルマトレルビル+リトナビルを投与し(ニルマトレルビル群),1,126 例にプラセボを投与した(プラセボ群).事前に計画していた,症状発現後 3 日以内に投与を受けた患者(修正 intention-to-treat 集団,全解析対象集団 1,361 例中 774 例)の中間解析では,28 日目までの Covid-19 関連入院または死亡の発生率は,ニルマトレルビル群のほうがプラセボ群よりも 6.32 パーセントポイント低く(95%信頼区間 [CI] -9.04~-3.59,P<0.001,相対リスク減少率 89.1%),ニルマトレルビル群では 0.77%(389 例中 3 例)で死亡 0 例,プラセボ群では 7.01%(385 例中 27 例)で死亡 7 例であった.修正 intention-to-treat 集団 1,379 例の最終解析においても有効性は維持され,差は -5.81 パーセントポイント(95% CI -7.78~-3.84,P<0.001,相対リスク減少率 88.9%)であった.死亡した 13 例はすべてプラセボ群であった.ウイルス量は,投与 5 日目の時点でニルマトレルビル+リトナビル群のほうがプラセボ群よりも低く,投与が症状発現後 3 日以内に開始された場合,差の補正後の平均値は -0.868 log10 コピー/mL であった.投与期間中の有害事象の発現率は 2 群で同程度であった(すべての有害事象:ニルマトレルビル+リトナビル群 22.6% 対 プラセボ群 23.9%,重篤な有害事象:1.6% 対 6.6%,ニルマトレルビル+リトナビルまたはプラセボの中止にいたった有害事象:2.1% 対 4.2%).ニルマトレルビル+リトナビル群では,プラセボ群よりも味覚異常(5.6% 対 0.3%)と下痢(3.1% 対 1.6%)の頻度が高かった.
症状を伴う Covid-19 患者に対するニルマトレルビル+リトナビル投与により,プラセボ投与と比較して重症化リスクは 89%低くなり,明らかな安全性の懸念は認められなかった.(ファイザー社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04960202)