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January 13, 2022 Vol. 386 No. 2

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大麻の合法化と交通事故で負傷した運転者におけるテトラヒドロカンナビノールの検出
Cannabis Legalization and Detection of Tetrahydrocannabinol in Injured Drivers

J.R. Brubacher and Others

背景

カナダでの大麻の合法化(2018 年 10 月)が,交通事故で負傷した運転者におけるテトラヒドロカンナビノール(THC)検査陽性者の割合に与える影響は明らかにされていない.

方 法

自動車衝突事故を起こし,ブリティッシュコロンビア州の 4 ヵ所の外傷センターのいずれかで治療された運転者について,2013 年 1 月~2020 年 3 月のデータを用いて調査した.中等度の外傷(臨床評価の一環として血液検査を要する状態)を負った運転者で,臨床検査完了後に余分な血液が残っていた人を組み入れた.血液は州の毒物研究機関で分析された.主要転帰は,THC 濃度が 0 より高値,2 ng/mL 以上(カナダにおける法的制限),5 ng/mL 以上とした.副次的転帰は,THC 濃度 2.5 ng/mL 以上+血中アルコール濃度 0.05%以上,血中アルコール濃度が 0 より高値,血中アルコール濃度 0.08%以上とした.すべての転帰について,割合を合法化前と合法化後で計算した.関連する共変量を補正後,物質(大麻とアルコール)の使用割合と合法化の関連をモデル化するために対数二項回帰を使用し,調整した割合の比を算出した.

結 果

調査期間中,運転者 4,339 例(合法化前 3,550 例,合法化後 789 例)が組入れ基準を満たした.合法化前の運転者のうち,THC 濃度が 0 より高値であった割合は 9.2%,2 ng/mL 以上であった割合は 3.8%,5 ng/mL 以上であった割合は 1.1%であった.合法化後は,それぞれ 17.9%,8.6%,3.5%であった.合法化後,THC 濃度が 0 より高値であった運転者の割合は増加し(調整した割合の比 1.33,95%信頼区間 [CI] 1.05~1.68),2 ng/mL 以上であった割合(調整した割合の比 2.29,95% CI 1.52~3.45),5 ng/mL 以上であった割合(調整した割合の比 2.05,95% CI 1.00~4.18)についても同様であった.THC 濃度 2 ng/mL 以上であった割合の増加がもっとも大きかったのは,50 歳以上の運転者(調整した割合の比 5.18,95% CI 2.49~10.78)と,男性の運転者(調整した割合の比 2.44,95% CI 1.60~3.74)であった.運転者のアルコール検査陽性割合に有意な変化は認められなかった.

結 論

調査に参加したブリティッシュコロンビア州外傷センターにおいて,大麻の合法化後,中等度の外傷を負った運転者でTHC 濃度 2 ng/mL 以上であった割合が 2 倍超に増加した.増加がもっとも大きかったのは,高齢運転者と男性運転者であった.(カナダ国立保健研究機構から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 148 - 56. )