April 21, 2022 Vol. 386 No. 16
オミクロン株(B.1.1.529 変異株)に対する Covid-19 ワクチンの有効性
Covid-19 Vaccine Effectiveness against the Omicron (B.1.1.529) Variant
N. Andrews and Others
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)のオミクロン株(B.1.1.529 変異株)によって,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)症例がワクチン接種率の高い集団で急増しており,現在のワクチンの有効性に懸念が生じている.
イングランドにおいて,オミクロン株およびデルタ株(B.1.617.2 変異株)による有症状の Covid-19 に対するワクチンの有効性を,検査陰性者を対照とする症例対照研究デザインを用いて推定した.BNT162b2(ファイザー社–ビオンテック社),ChAdOx1 nCoV-19(アストラゼネカ社),mRNA-1273(モデルナ社)のいずれかのワクチンの 2 回接種による初回免疫後のワクチン有効率と,BNT162b2,ChAdOx1 nCoV-19,mRNA-1273 のいずれかによるブースター接種後のワクチン有効率を算出した.
2021 年 11 月 27 日~2022 年 1 月 12 日に,オミクロン株感染者の適格例 886,774 例,デルタ株感染者の適格例 204,154 例,検査陰性の対照の適格例 1,572,621 例を同定した.すべての調査時点,および初回免疫ワクチンとブースターワクチンのすべての組合せにおいて,有症状の Covid-19 の防御には,デルタ株に対する有効性のほうがオミクロン株に対する有効性よりも高かった.オミクロン株に対して,ChAdOx1 nCoV-19 では,2 回目の接種後 20 週以降は効果が認められなかったのに対し,BNT162b2 では,2 回目の接種後 2~4 週の時点で有効率 65.5%(95%信頼区間 [CI] 63.9~67.0)であり,25 週以降は 8.8%(95% CI 7.0~10.5)に低下した.初回免疫で ChAdOx1 nCoV-19 を接種した人では,BNT162b2 によるブースター接種後,2~4 週の時点で有効率は 62.4%(95% CI 61.8~63.0)まで上昇し,10 週以降は 39.6%(95% CI 38.0~41.1)に低下した.初回免疫で BNT162b2 を接種した人では,BNT162b2 によるブースター接種後,2~4 週の時点で有効率は 67.2%(95% CI 66.5~67.8)まで上昇し,10 週以降は 45.7%(95% CI 44.7~46.7)に低下した. 初回免疫で ChAdOx1 nCoV-19 を接種した人では,mRNA-1273 によるブースター接種後,2~4 週の時点で有効率は 70.1%(95% CI 69.5~70.7)まで上昇し,5~9 週の時点で 60.9%(95% CI 59.7~62.1)に低下した.初回免疫で BNT162b2 を接種した人では,mRNA-1273 によるブースター接種後,2~4 週の時点で有効率は 73.9%(95% CI 73.1~74.6)まで上昇し,5~9 週の時点で 64.4%(95% CI 62.6~66.1)に低下した.
ChAdOx1 nCoV-19 または BNT162b2 の 2 回接種による初回免疫の,オミクロン株による有症状の Covid-19 に対する防御効果は限定的であった.初回免疫で ChAdOx1 nCoV-19 または BNT162b2 の接種を受けた後,BNT162b2 または mRNA-1273 によるブースター接種を受けることで防御効果は大幅に向上したが,その効果は経時的に減弱した.(英国健康安全保障庁から研究助成を受けた.)