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May 12, 2022 Vol. 386 No. 19

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カタールにおける SARS-CoV-2 オミクロン株感染に対する mRNA ワクチンブースター接種の効果
Effect of mRNA Vaccine Boosters against SARS-CoV-2 Omicron Infection in Qatar

L.J. Abu-Raddad and Others

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対するワクチンの防御効果の減衰と,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)のオミクロン株(B.1.1.529 変異株)の出現により,ブースター接種の規模を拡大するための取組みが推進されている.カタールにおいて,BNT162b2 ワクチン(ファイザー社–ビオンテック社)および mRNA-1273 ワクチン(モデルナ社)によるブースター接種の防御効果が,2 回接種の初回免疫と比較してどの程度であるかは不明である.

方 法

オミクロン株感染の大きな波に見舞われていた 2021 年12 月 19 日~2022 年 1 月 26 日に,有症状の SARS-CoV-2 感染,および Covid-19 関連の入院・死亡に対するブースター接種の有効性を,2 回接種の初回免疫のみの場合と比較評価するため,2 つのマッチさせた後ろ向きコホート研究を行った.ブースター接種の有無と感染との関連を,Cox 比例ハザード回帰モデルを用いて推定した.

結 果

BNT162b2 ワクチンまたは mRNA-1273 ワクチンの接種を少なくとも 2 回受けた 2,239,193 例の集団において,ブースター接種も受けた人を,ブースター接種を受けていない人とマッチさせた.BNT162b2 ワクチン接種コホートでは,35 日間追跡後の有症状のオミクロン株感染の累積発生率は,ブースター接種者で 2.4%(95%信頼区間 [CI] 2.3~2.5),ブースター未接種者で 4.5%(95% CI 4.3~4.6)であった.有症状のオミクロン株感染に対するブースター接種の有効率は,初回免疫と比較して 49.4%(95% CI 47.1~51.6)であった.オミクロン株感染による Covid-19 関連の入院・死亡に対するブースター接種の有効率は,初回免疫と比較して 76.5%(95% CI 55.9~87.5)であった.有症状のデルタ株(B.1.617.2 変異株)感染に対しては,BNT162b2 ワクチンによるブースター接種の有効率は,初回免疫と比較して 86.1%(95% CI 67.3~94.1)であった.mRNA-1273 ワクチン接種コホートでは,35 日間追跡後の有症状のオミクロン株感染の累積発生率はブースター接種者で 1.0%(95% CI 0.9~1.2),ブースター未接種者で 1.9%(95% CI 1.8~2.1)であり,有症状のオミクロン株感染に対するブースター接種の有効率は,初回免疫と比較して 47.3%(95% CI 40.7~53.3)であった.mRNA-1273 ワクチン接種コホートでは Covid-19 の重症例は少なかった.

結 論

2 つのメッセンジャー RNA(mRNA)ワクチンによるブースター接種は,有症状のデルタ株感染に対する有効性は高かったものの,有症状のオミクロン株感染に対する有効性はそれよりも低かった.しかしいずれの変異株についても,mRNA ワクチンによるブースター接種は,Covid-19 関連の入院・死亡に対して強力な防御効果をもたらした.(ワイル・コーネル医科大学カタール校ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 1804 - 16. )