特発性肺線維症に対する優先的ホスホジエステラーゼ 4B 阻害薬の試験
Trial of a Preferential Phosphodiesterase 4B Inhibitor for Idiopathic Pulmonary Fibrosis
L. Richeldi and Others
ホスホジエステラーゼ 4(PDE4)の阻害は,特発性肺線維症患者に有益となりうる抗炎症作用および抗線維化作用と関連している.
第 2 相二重盲検プラセボ対照試験で,PDE4B サブタイプを優先的に阻害する経口薬 BI 1015550 の,特発性肺線維症患者における有効性と安全性を検討した.患者を,BI 1015550 を 18 mg の用量で 1 日 2 回投与する群と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは 12 週の時点での努力肺活量(FVC)のベースラインからの変化量とし,基礎治療としての抗線維化薬使用の有無に基づいてベイズ法で解析した.
147 例が BI 1015550 群とプラセボ群に無作為に割り付けられた.基礎治療として抗線維化薬を使用していなかった患者では,FVC の変化量の中央値は BI 1015550 群で 5.7 mL(95%信用区間-39.1~50.5),プラセボ群で -81.7 mL(95%信用区間 -133.5~-44.8)であった(差の中央値 88.4 mL,95%信用区間 29.5~154.2,BI 1015550 がプラセボよりも優れている確率 0.998).基礎治療として抗線維化薬を使用していた患者では,FVC の変化量の中央値は BI 1015550 群で 2.7 mL(95%信用区間 -32.8~38.2),プラセボ群で-59.2 mL(95%信用区間 -111.8~-17.9)であった(差の中央値 62.4 mL,95%信用区間 6.3~125.5,BI 1015550 がプラセボよりも優れている確率 0.986).混合モデル反復測定解析では,ベイズ解析と一致する結果が得られた.もっとも頻度が高かった有害事象は下痢であった.13 例が有害事象のために BI 1015550 の投与を中止した.重篤な有害事象または重度の有害事象が発現した患者の割合は,2 群で同程度であった.
このプラセボ対照試験で,BI 1015550 は,単独投与でも基礎治療としての抗線維化薬との併用でも,特発性肺線維症患者の肺機能低下を防止した.(ベーリンガーインゲルハイム社から研究助成を受けた.1305-0013 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号NCT04419506)