December 8, 2022 Vol. 387 No. 23
乳児の心臓手術におけるメチルプレドニゾロン ― 無作為化比較試験
Methylprednisolone for Heart Surgery in Infants — A Randomized, Controlled Trial
K.D. Hill and Others
周術期の予防的グルココルチコイド投与は何十年も行われてきたが,人工心肺を使用する心臓手術後の乳児の転帰を改善するかどうかは明らかにされていない.
米国胸部外科学会先天性心疾患手術データベースに参加している 24 施設で,人工心肺を使用する心臓手術を受ける乳児(1 歳未満)を対象として,多施設共同前向き無作為化プラセボ対照登録ベース試験を行った.登録データを用いて転帰を評価した.乳児を,予防的にメチルプレドニゾロン(30 mg/kg 体重)を投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.投与は人工心肺ポンプのプライミング液に添加して行った.主要エンドポイントは,死亡,心臓移植,13 の主要合併症を順位付けし,それらの複合とした.これらのイベントが発生しなかった患児では,術後の入院期間を順位付けし,それを転帰とした.主要解析では,順位付けした転帰を,事前に規定した危険因子を補正したオッズ比を用いて,試験群間で比較した.副次的解析では,未補正オッズ比,勝率(win ratio),安全性転帰などを検討した.
1,263 例が無作為化され,1,200 例がメチルプレドニゾロン(599 例)またはプラセボ(601 例)の投与を受けた.転帰不良となる確率に,メチルプレドニゾロン群とプラセボ群とのあいだで有意差は認められなかった(補正オッズ比 0.86,95%信頼区間 [CI] 0.71~1.05,P=0.14).副次的解析(危険因子の補正なし)では,メチルプレドニゾロン群のプラセボ群と比較した転帰不良のオッズ比は 0.82(95% CI 0.67~1.00),勝率は 1.15(95% CI 1.00~1.32)であり,メチルプレドニゾロンの有益性を示唆する結果が示された.しかし,メチルプレドニゾロン群の患児では,プラセボ群の患児よりも,術後に高血糖に対してインスリンを投与される確率が高かった(19.0% 対 6.7%,P<0.001).
人工心肺を使用する手術を受ける乳児にメチルプレドニゾロンを予防的に投与しても,補正した解析では転帰不良となる確率が有意に低下することはなく,術後にインスリン投与を要する高血糖が発現する割合がプラセボよりも高いことに関連した.(米国国立先進トランスレーショナル科学センターほかから研究助成を受けた.STRESS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03229538)