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August 18, 2022 Vol. 387 No. 7

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妊娠糖尿病の診断に用いる血糖の基準値を低めに設定した場合と高めに設定した場合との比較
Lower versus Higher Glycemic Criteria for Diagnosis of Gestational Diabetes

C.A. Crowther and Others

背景

妊娠糖尿病の治療により母子の健康は改善するが,その診断基準は明らかにされていない.

方 法

妊娠 24~32 週の女性を,妊娠糖尿病の評価において,その診断に用いる血糖の基準値を低めに設定する群と,高めに設定する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.低めの基準値は,空腹時血糖値 92 mg/dL 以上(≧5.1 mmol/L),1 時間値 180 mg/dL 以上(≧10.0 mmol/L),2 時間値 153 mg/dL 以上(≧8.5 mmol/L)のいずれかとした.高めの基準値は,空腹時血糖値 99 mg/dL 以上(≧5.5 mmol/L),または 2 時間値 162 mg/dL 以上(≧9.0 mmol/L)とした.主要転帰は,在胎期間に比して体格の大きい(LGA)児(出生体重がフェントン–WHO 基準の 90 パーセンタイルを超える)の出生とした.副次的転帰は母子の健康などとした.

結 果

4,061 例が無作為化された.妊娠糖尿病は,低めの基準値群の 2,022 例中 310 例(15.3%),高めの基準値群の 2,039 例中 124 例(6.1%)で診断された.低めの基準値群の女性から出生した児 2,019 例のうち 178 例(8.8%)が LGA 児であり,高めの基準値群の女性から出生した児 2,031 例のうち 181 例(8.9%)が LGA 児であった(補正相対リスク 0.98,95%信頼区間 0.80~1.19,P=0.82).分娩誘発,医療の利用,薬剤の使用,新生児低血糖の頻度は,低めの基準値群のほうが高めの基準値群よりも高かった.ほかの副次的転帰の結果は 2 群で同様であり,有害事象に 2 群間で大きな差はなかった.両群で,血糖測定の結果が低めの基準値と高めの基準値の中間であった女性のうち,妊娠糖尿病の治療を受けた女性(195 例)では,治療を受けなかった女性(178 例)と比較して,LGA 児が少ないなど,母子の健康への利益が認められた.

結 論

妊娠糖尿病の診断に用いる血糖の基準値を低めに設定しても,高めに設定した場合と比較して,LGA 児のリスクは低下しなかった.(ニュージーランド保健研究評議会ほかから研究助成を受けた.GEMS 試験:Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12615000290594)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 587 - 98. )