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August 25, 2022 Vol. 387 No. 8

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16 ヵ国におけるヒトのサル痘ウイルス感染 ― 2022 年 4 月~6 月
Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries — April–June 2022

J.P. Thornhill and Others

背景

ヒトのサル痘ウイルス感染が蔓延地域であるアフリカ以外で報告されることは,2022 年 4 月まではほとんどなかった.いまでは世界中で症例が発生している.感染の伝播,危険因子,臨床症状,転帰は,十分に明らかにされていない.

方 法

PCR 法で確認されたサル痘ウイルス感染の症状,臨床経過,転帰を記述する国際的なケースシリーズを作成するため,感染者のいる国の臨床医に呼びかけ,国際共同研究グループを結成した.

結 果

2022 年 4 月 27 日~6 月 24 日に 16 ヵ国 43 施設で診断された,528 件の感染について報告する.全体で,感染者の 98%がゲイまたはバイセクシュアルの男性であり,75%が白人で,41%がヒト免疫不全ウイルス感染者であった.年齢の中央値は 38 歳であった.感染者の 95%で,性行為を介した伝播が疑われた.今回のケースシリーズでは,感染者の 95%が皮疹を訴えて受診し(64%は 10 個未満),皮疹が認められた部位は肛門性器が 73%,粘膜が 41%であった(54 例は外陰部の皮疹 1 個).皮疹に先行する全身症状で頻度が高かったのは,発熱(62%),嗜眠(41%),筋肉痛(31%),頭痛(27%)であった.リンパ節腫脹の頻度も高かった(56%).性感染症の重複感染は,検査を受けた 377 例中 109 例(29%)で報告された.曝露歴が明らかであった 23 例では,潜伏期間の中央値は 7 日(範囲 3~20 日)であった.精液の解析が行われた 32 例中 29 例でサル痘ウイルス DNA が検出された.全体で,5%が抗ウイルス治療を受け,70 例(13%)が入院した.入院理由は,疼痛管理(21 例,大部分が重度の肛門直腸痛),軟部組織の重感染(18 例),経口摂取が制限される咽頭炎(5 例),眼病変(2 例),急性腎障害(2 例),心筋炎(2 例),感染制御目的(13 例)であった.死亡は報告されなかった.

結 論

今回のケースシリーズにおいて,サル痘は,多彩な皮膚および全身の臨床所見で発症した.以前からサル痘が蔓延していた地域以外で症例が同時に同定されたことで,市中感染のさらなる拡大を防ぐためには,症例の迅速な同定と診断が必要であることが強調された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 679 - 91. )