オピオイド使用障害を治療するための薬剤の受取りにおける人種格差
Racial Inequality in Receipt of Medications for Opioid Use Disorder
M.L. Barnett and Others
2010 年以降,米国の黒人では,オピオイド過量服用に関連する死亡率がほかのグループよりも大幅に上昇しているが,オピオイド使用障害(OUD)の治療薬の使用における人種・民族格差の特徴を明らかにする,国レベルでのエビデンスは限られている.
メディケアの 2016~19 年の請求データを用いて,出来高払い(fee-for-service)の受給者から無作為に 40%のサンプルを抽出した.黒人,ヒスパニック系,白人のいずれかで,障害のためメディケアに適格であり,OUD に関連する初発イベント(救急部または入院環境下で治療された非致死的な過量服用,注射薬物の使用に関連する感染による入院,入院または宿泊でのリハビリテーションまたは解毒治療)が発生した人を対象とした.初発イベント後 180 日以内に発生した,OUD を治療するための薬剤(ブプレノルフィン,ナルトレキソン [naltrexone],ナロキソン)の受取り,高リスクの薬剤(オピオイド鎮痛薬,ベンゾジアゼピン系薬)の受取り,医療の利用の頻度を測定した.転帰における人種・民族グループ別の差を,受給者の年齢,性別,初発イベント,慢性併存疾患の数,施設入居状況で補正して推定した.
OUD に関連する初発イベントは,組み入れた 23,370 人に 25,904 件同定され,3,937 件(15.2%)が黒人患者,2,105 件(8.1%)がヒスパニック系患者,19,862 件(76.7%)が白人患者に発生していた.初発イベント後 180 日以内にブプレノルフィンを受け取った割合は,黒人患者ではイベントの 12.7%,ヒスパニック系患者では 18.7%,白人患者では 23.3%であり,ナロキソンについてはそれぞれ 14.4%,20.7%,22.9%,ベンゾジアゼピン系薬についてはそれぞれ 23.4%,29.6%,37.1%であった.OUD を治療するための薬剤の受取りにおける人種格差に,2016~19 年のあいだに大きな変化はみられなかった(ブプレノルフィンを受け取った割合は,2016 年は,黒人患者では初発イベントの 9.1%であったのに対し,白人患者では 21.6%で,2019 年は 14.1% 対 25.5%).すべてのグループで,患者は初発イベント後 180 日以内に外来を複数回受診していた(受診回数の平均:黒人患者 6.6 回,ヒスパニック系患者 6.7 回,白人患者 7.6 回).
障害を有する患者では,OUD に関連した初発イベント後の OUD を治療するための薬剤の受取りにおける人種・民族による差は大きく,経時的変化はみられなかった.外来受診の発生率が高かったことは,すべてのグループにおいて,医療を頻繁に受けているにもかかわらず格差が持続していることを示している.(米国国立薬物乱用研究所,米国国立老化研究所から研究助成を受けた.)