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February 2, 2023 Vol. 388 No. 5

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腎ドナーにおける低体温療法と機械灌流保存との比較
Hypothermia or Machine Perfusion in Kidney Donors

D. Malinoski and Others

背景

脳死臓器ドナーに対する低体温療法は,腎移植レシピエントにおける移植腎機能発現遅延を減少させることが示されている.腎移植後の転帰に関して,低体温療法の効果を,機械灌流保存と比較したデータが必要である.

方 法

米国の 6 つの臓器提供施設で,脳死腎ドナーを,低体温療法を行う群(低体温療法群),体外で腎臓の低温機械灌流保存を行う群(機械灌流保存群),その両方を行う群(併用療法群)に無作為に割り付けた.主要転帰は,腎移植レシピエントにおける移植腎機能発現遅延(移植後 7 日以内の透析開始と定義)とした.低体温療法単独が機械灌流保存単独に対して非劣性を示すかどうか,2 つの方法の併用がいずれかの方法に対して優越性を示すかどうかも評価した.副次的転帰は,移植後 1 年の時点での移植腎生着率などとした.

結 果

組み入れられたドナー 725 例から,1,349 個の腎臓が移植された.内訳は,低体温療法群 359 個,機械灌流保存群 511 個,併用療法群 479 個であった.移植腎機能発現遅延は,低体温療法群の 109 例(30%),機械灌流保存群の 99 例(19%),併用療法群の 103 例(22%)に発生した.移植腎機能発現遅延の補正リスク比は,低体温療法群 対 機械灌流保存群で 1.72(95%信頼区間 [CI] 1.35~2.17),低体温療法群 対 併用療法群で 1.57(95% CI 1.26~1.96),併用療法群 対 機械灌流保存群で 1.09(95% CI 0.85~1.40)であった.1 年の時点で,移植腎生着率は 3 群で同程度であった.有害事象は 10 件報告され,ドナー 9 例が心臓血管不安定,1 例が灌流不良による臓器喪失であった.

結 論

脳死臓器ドナーに対する低体温療法は,移植腎機能発現遅延の減少に関して,腎臓の機械灌流保存と比較して劣っていた.低体温療法と機械灌流保存を併用しても,追加的な防御効果は得られなかった.(アーノルド ベンチャーズから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02525510)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 418 - 26. )